今、ロック界はかつてないほどの激震に見舞われている。2月に大阪市のライブハウスでクラスターが発生して以来、ほとんどのロックバンドはライブ活動の場を失っている。だが、ウイルスによる閉塞感に満ちた世の中だからこそ、ロックで救われる人もいるはずだ。当のミュージシャンはこの状況をいかに突破しようとしているのか。日本を代表するヘヴィ・ロックバンド「DIR EN GREY」のギタリスト・薫がインタビューに応じた。
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――コロナ禍でDIR EN GREYのライブ活動にも大きな影響が出ています。3月下旬~4月下旬に予定されていた全国ツアーと、7月23、24日のぴあアリーナ MMでの2DAYSは相次いで開催中止が発表されました。薫さんはこの決定をどう受け止めていますか。
薫 まず、ツアーに関しては緊急事態宣言前で、どのような対策を取れば開催できて、何がダメなのかという基準もはっきりしない状態でした。対策の方法が明確にならないなかで、延期、再延期を繰り返すべきではないということで中止に至りました。ぴあアリーナ公演は、ギリギリまでやれる方向を探りました。アリーナはスタンディングから固定の席に変えて、客席も間隔を空ければ、人数的にはどうにか可能だろうとか、さまざまなシミュレーションをしました。でも、会場の換気が義務付けられているなかで、たとえば演出でスモークをたいても煙がすべてそちらに流れていってしまうなど、バンドが表現しようとすることができないこともわかってきた。また、会場に来たくてもこの状況では来られないお客さんも多いだろうと。アリーナクラスのライブで、十分に環境が整わないのに「やる」ことだけにこだわるべきではないと判断し、悔しいけれど、開催は断念しました。
――公式ホームページには、「先日政府から出されたライブ開催におけるガイドラインに従った上で、バンドの本質である『表現』を成立させる事が可能かと検討致しましたが不可能と考えざるを得ず、中止という結論に至りました」と記載されています。薫さんにとって、DIR EN GREYがライブで成すべき「表現」とは何だと考えていますか。