現役時代の思い出の衣装と言えば、入場のときに着るガウンだね。今は亡くなってしまったけど、スポーツメーカーの「デサント」の大谷さんという方にとてもお世話になった。大谷さんが俺の試合を見て感じたイメージで「We All Want To Change The World」や「Reborn For The Future」といったキャッチフレーズを付けて、ガウンを作ってくれていたんだ。俺もその言葉に触発されることも多かったし、「Catch As If You Can」と描かれた俺のガウンを見て、ハンセンが「なんだ、コノヤロー!」って触発されたこともあったらしいよ(笑)。

 お気に入りのガウンは多いが、特に思い入れがあるのは1977年に東京・世田谷体育館で日本デビューしたときに着たもので、これは相撲時代にお世話になった人が作ってくれたものだ。このガウンを2015年の引退試合のときにも約40年ぶりに着てね。ガウンを脱ぐと天龍のトレードマークであるショートトランクス姿で、これはお客さんが大いに喜んでくれた! このガウンとショートトランクスにしようと言ったのは代表で、今でも俺と二人で「あれば100点だったね!」って思い出すたびに言っているよ(笑)。

 さて、いろいろな洋服を着てきたが、引退してから5年経った今はまた着物を着たいと思っている俺がいる。なぜかというと、俺の相撲時代の憧れの人である北の富士さんが、今でも着物で大相撲中継の解説をしている姿がカッコいいからだ。代表にも「いくつになっても北の富士さんに憧れて……。少年みたいだね」と言われるが、その通りだ(笑)。ただ着物は日本の文化だけど、なかなか着る機会が無いのは寂しいね……。この年になると着物をピシっと着て、襟を正している、そんな自分でありたいと思うよ。カッコつけると気持ちも変わるってもんだ。

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天龍源一郎

天龍源一郎

天龍源一郎(てんりゅう・げんいちろう)/1950年、福井県生まれ。「ミスター・プロレス」の異名をとる。63年、13歳で大相撲の二所ノ関部屋入門後、天龍の四股名で16場所在位。76年10月にプロレスに転向、全日本プロレスに入団。90年に新団体SWSに移籍、92年にはWARを旗揚げ。2010年に「天龍プロジェクト」を発足。2015年11月15日、両国国技館での引退試合をもってマット生活に幕を下ろす。

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