太田宏介の左足も強烈だ。左サイドからの高精度のクロスボールだけでなく、FKでも長短問わずに大きくカーブをかけたボールで多くの得点を生み出してきた。現在は名古屋グランパスに所属。キャリア的には横浜FCから清水エスパルス、さらにオランダでもプレーしたが、2012年から在籍したFC東京時代の印象が強く、2015年には3本の直接FK弾を叩き込んだ。さらに2018年の川崎フロンターレとの多摩川クラシコではFKから2アシストを記録。味方に合わせるのが上手いのも、太田の左足FKの特徴だろう。 

 代表歴はないが、Jリーグ屈指の左足FKの名手と言えるのが、コンサドーレ札幌の福森晃斗だ。1992年生まれの27歳。中村と同じ桐光学園高校出身のレフティーだが、ポジションはセンターバック。プロ入りは川崎フロンターレで、2015年に移籍した札幌(当時J2)で定位置を掴むと同時に「FK職人」の道を歩み、2017年7月8日の大宮アルディージャ戦では2点ビハインドの後半36分、さらに終了間際のラストプレーと2連発で直接FK弾を叩き込んだ。さらに名勝負として記憶される2019年のルヴァン杯決勝では、2対2の延長前半4分に強烈な直接FKでゴールネットを揺らし、一時勝ち越しとなるゴールを奪って見せた。

 その他、現役選手では天野純(横浜F・マリノス)や山中亮輔(浦和レッズ)、丸橋祐介(セレッソ大阪)も左足FKの名手に名前を挙げられるが、今後の“伸びしろ”という意味では、久保建英(マジョルカ)の左足に期待を込めたい。Jリーグでは2019年のFC東京時代のルヴァン杯で、右サイドの角度のないところからFK弾で直接ゴールを記録。今季在籍したマジョルカでも、プレースキッカーの役割を自らの実力で奪い取り、実際の試合でもゴールとなりそうな惜しいシュートを放っている。左足の精度は、すでに一流。今後、さらなる筋力強化でキックのパワーと安定感が増せば、中村のように世界を驚かせ、さらに年を重ねるごとにFKの精度を上げてきたリオネル・メッシのように、より多くのゴールを奪えるようになるはずだ。