日本が生んだ最強のレフティー中村俊輔 (c)朝日新聞社
日本が生んだ最強のレフティー中村俊輔 (c)朝日新聞社

 日本が世界に誇る歴代ナンバーワンのフリーキック(FK)の名手と言えば、中村俊輔で間違いないだろう。長らく日本代表の得点源となり、セルティック時代には欧州CLのマンチェスター・ユナイテッド戦(2006年9月)で決めた2本のFKゴールは今でも伝説的に語られ、Jリーグにおいても直接FKで歴代最多の24得点を決めている。では、中村の次にFKが上手い日本人レフティーは誰なのだろうか。

 発足直後のJリーグの中では、岩本輝雄が大きなインパクトを残した。ベルマーレ平塚(現・湘南)の超攻撃型サイドバックとして「左足の貴公子」の異名を取り、ベガルタ仙台時代の2003年10月18日のジェフユナイテッド市原(現・千葉)戦で披露した約40メートルの超ロング弾丸FK弾は伝説だ。度重なる怪我がキャリアに大きな影響を及ぼしたのは悔やまれるが、Jリーグ通算の直接FK得点数10は、レフティーでは中村に次ぐもの。パワーでは中村を遥かに凌ぐ左足は、ピッチ上で“違い”を見せられるものだった。

 その岩本と同じJ通算FK得点数10をマークしたのが、三都主アレサンドロである。ブラジル出身の帰化選手として日本代表でも2度のW杯(02年日韓、06年ドイツ)を含む通算82試合に出場した名選手。日韓W杯でのトルコ戦でのFKはクロスバーを叩いたが、浦和レッズ時代の2004年のJリーグ・チャンピオンシップ、横浜F・マリノスとの第2戦では、後半31分にGKの逆を突いてゴール外側からファーサイドに叩き込むFK弾を決め、真っ赤に染まった埼玉スタジアムを歓喜に包んだ。ドリブル突破が最大の魅力だったが、同時に左足のキックの精度も日本史上屈指のものがあった。

 そしてレッズサポーターだけでなく、日本中を興奮させたFKを放ったレフティーと言えば、やはり本田圭佑だろう。2010年の南アフリカW杯でのデンマーク戦で、前半17分に右サイドのタッチライン際から力強く左足を振り抜き、無回転のブレ球をサイドネットへ突き刺したFK弾は、何度もリプレーされ、ファンの記憶に強く刻まれている。その前の2007年、北京五輪予選の香港戦でも、ゴール右からボールを左右に2度曲げる魔球FK弾を披露している“ケイスケホンダ”。中村と比べると確実性は落ちるが、予想のつかない弾道は「悪魔」の形容詞をつけるのに相応しい。

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中村俊輔の“後輩”もFKの名手