(イラスト/今崎和広)
(イラスト/今崎和広)
『新「名医」の最新治療2020』より
『新「名医」の最新治療2020』より

 急性白血病と比較し、病状がゆるやかに進行する慢性白血病だが、中でも慢性骨髄性白血病はかつて移植が必須だった。しかし、近年は新薬の登場で治療の選択肢が増えてきているという。週刊朝日ムック『新「名医」の最新治療2020』でが、慢性白血病の治療法について専門医に話を聞いた。

【図】白血病の主な症状は?かかりやすい年代は?

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 慢性白血病はゆるやかな進行経過をたどる。

 慢性骨髄性白血病と慢性リンパ性白血病に分類される。慢性骨髄性白血病は白血病患者全体の1割程度、慢性リンパ性白血病は日本人では稀な病気だ。高齢者に多い。

 慢性骨髄性白血病は、急性と違い、成熟した白血球を中心に増加するのが特徴だ。90%以上にフィラデルフィア染色体という、染色体異常の結果生じる異常な融合遺伝子が発症の原因だ。

 慢性骨髄性白血病は、発症後5~6年慢性期が続き、その後6~9カ月の移行期を経て、急性転化期を迎える。東京女子医科大学病院血液内科教授の田中淳司医師はこう話す。

「慢性骨髄性白血病は、ゆるやかに進行しますが、ひとたび急性転化すると急性白血病よりも抗がん剤の効き目が悪くなります。以前は、ドナーが見つからずに移植ができない場合には、発症から6~7年で亡くなってしまう病気でした」

 ところが01年、チロシンキナーゼ阻害剤というタイプの薬であるイマチニブの登場で状況は一変する。今では治療開始後の5年生存率が約9割と、早期固形がんのような良好な生命予後を達成している。

■新薬登場により治療選択肢が増えた

「昔は、根治に導くためには、移植が絶対必須でしたが、今や移植をしないでも根治が見込める病気となりました」(田中医師)

 イマチニブは、チロシンキナーゼ阻害剤の第1世代で、その後、第2世代のニロチニブ、ダサチニブ、ボスチニブ、そして第3世代のポナチニブと次々に新しい薬が開発され、治療の選択肢が一気に増えた。最初の治療が奏効しなくても次々と治療をつないでいけるようになったわけだ。

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