では、新型コロナウイルスの流行は性生活にどのような影響を及ぼしているのでしょうか。新型コロナウイルスによるパンデミック期間中(2020年3月11日~4月12日)の女性の性交頻度、妊娠願望、女性性機能指数(FSFI)スコア、避妊の種類、月経異常をパンデミック前の6~12カ月間と比較し、トルコの女性におけるパンデミック期間中の性生活の変化を評価した研究結果が、Esenler Maternity and Children’s HospitalのBahar 氏らによって報告されています。

 それによると、パンデミック前の平均的な性交頻度は1.9回/週であったのに対して、パンデミック期間中は2.4回/週と有意に増加した一方で、パンデミック期間中の避妊の使用(17.2%)は、パンデミック前(41.3%)と比較して有意に減少していました。また、パンデミック前は32.7%が妊娠を希望していましたが、パンデミック中は5.1%に減少しており、月経不順はパンデミック前(12.1%)よりもパンデミック中(27.6%)に多くみられました。性的欲求と性交の頻度はCOVID-19流行中に大幅に増加したものの、性生活の質は大幅に低下したことが明らかになったのでした。

 ちなみに、2020年7月13日時点でトルコにおける感染者数は212,993人、死者数は5,363人と、中東地域では最多を更新しています。

 新型コロナウイルス感染拡大の終息が見られない今、感染への恐れや外出自粛による医療施設への受診控えは、まだまだ続くと思われます。日本において、緊急事態宣言や外出自粛がもたらした女性への影響をしっかり把握することが、対応策を考える上で重要なのではないでしょうか。

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山本佳奈

山本佳奈

山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。2022年東京大学大学院医学系研究科修了。ナビタスクリニック(立川)内科医、よしのぶクリニック(鹿児島)非常勤医師、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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