郵便局はいま「危篤」状態にある。かんぽ不正販売や長引く超低金利で弱体化した「日本郵政グループ」に、新型コロナによる株価下落が襲いかかり、「破綻」の危機に直面しているのだ。私たちの生活にもっとも身近な金融機関「郵便局」の内実と、その崩壊の衝撃から自分のお金を守る方法について、『「郵便局」が破綻する』(朝日新書)の著者で経済ジャーナリストの荻原博子氏が報告する。

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■なぜ郵便局が「破綻」するのか

「郵便局」は日本最初の官営フランチャイズチェーンで、明治4年(1871年)に設立。郵便を配るだけでなく、「貯金」と「簡易保険」とで金を集める「集金マシーン」で、戦前は、集めた金を戦争のために使っていました。

 終戦直後は、「預金封鎖」やマッカーサーの特定郵便局長会への解体命令でピンチに陥りましたが、田中角栄の登場で、再び繁栄を迎えました。田中角栄は、「郵便局」で集めた金を、「財政投融資」というかたちで「国の第二の予算」として使い、土建国家を築きました。さらに、政治家の「集票マシーン」として利用したため、戦後、「郵便局」は約1万局も増えました。

 田中角栄が築いた土建国家を覆したのが、小泉純一郎の「郵政民営化」でした。そこには、「郵便局」に触手を伸ばす米政府の意向も大きく働いていたと言われています。「郵政民営化」は紆余曲折の末、2012年に「日本郵政」を親会社に、「日本郵便」と「ゆうちょ銀行」「かんぽ生命保険」(以下、かんぽ生命)の4社体制になりました。

 しかし、政治に翻弄された結果、「民営化」とは名ばかりの中途半端なものとなり、「破綻」を避けられない5つの時限爆弾が埋め込まれました。

 第1は、グループ各社の株価の下落。コロナショックで拍車がかかりました。今のままだと東日本大震災の復興財源が確保できず、「日本郵政グループ」が3兆円弱の巨額損失を計上する可能性が出てきました。

 第2は、コストのかかる全国一律の「ユニバーサルサービス」を義務付けられているため、赤字体質から抜け出せず、しかも「郵便局」を支える「ゆうちょ銀行」「かんぽ生命」2社が「不正販売問題」もあって稼ぎが激減。「ユニバーサルサービス」が義務付けられているので「郵便局」の数を減らすことができず、局員の数を大量に減らしていることでブラック企業化が進んでいます。

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第3の時限爆弾は…?