※写真はイメージです(c)Getty Images
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 当時16歳だった男子生徒がいじめを苦に自殺した2年前のできごとが今、波紋を呼んでいます。家庭裁判所の審判は加害者に対して「不処分」という決定でした。ネット上には「人が死んでいるのに、なぜ不処分なんだ」という声も上がっています。不登校新聞の編集長、石井志昂さんは、少年が自殺当日に「LINEグループから外された」という点に注目しています。いじめ被害者が置かれた状況から、その意味を考えます。

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 福岡県教育委員会によると、2018年6月、福岡県久留米市の県立高校に通っていた男子生徒は、いじめをうかがわせるメモを残し、自ら命を絶ちました。遺族から被害届を受けた福岡県警は今年1月、加害者の少年3人を暴力法違反の疑いで書類送検。家裁は5月から審判を開始していました。
 
 先月になって、加害者の少年3人に対し、家裁の審判で「不処分」という決定が出ていたことが報道されました。理由は明らかにされていません。
 
 この問題で、メディアでも世間もあまり注目していない点があります。それは、自殺当日に「同級生のLINEグループから外された」という事実です。多くの大人は、子どもから、こういった相談を受けてもそれほど危機感を持てません。「そんな奴らほっとけ」とか、「気にする必要はない」と言ってしまうでしょう。

 しかし、グループ外しは、子どもの気持ちや背景に目を向けて注視してもらいたい事態なのです。県教委の調査報告書はこのことをいじめと認定しており、私も自殺の強い引き金になったと考えています。

■グループ外しが意味する恐怖感

 県教委によれば、同学年の部員5人が中心となり、以下の行為を男子生徒に対し行っていました。

(1)男子生徒のズボンを複数回にわたって下ろした

(2)携帯電話を複数回隠した

(3)LINEグループから外した

 さらに自殺当日、男子生徒の通学用の靴と部活用のスパイクのひもを結びつけられていました。調査報告書によると、これらのいじめによって男子生徒は「衝動的に自殺に至った」と結論づけています。

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石井志昂

石井志昂

石井志昂(いしい・しこう)/1982年、東京都町田市出身。中学校受験を機に学校生活があわなくなり、教員や校則、いじめなどを理由に中学2年生から不登校。同年、フリースクール「東京シューレ」へ入会。19歳からNPO法人全国不登校新聞社が発行する『不登校新聞』のスタッフとなり、2006年から編集長。これまで、不登校の子どもや若者、識者など400人以上に取材してきた

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グループ外しは本格的ないじめ宣告