(イラスト/今崎和広)
(イラスト/今崎和広)
『新「名医」の最新治療2020』より
『新「名医」の最新治療2020』より

 かつて国民病とも言われた脳卒中(脳血管疾患)は、現在でも日本人の死因の第4位で全死亡者数の8%に上る。脳梗塞は脳卒中のうち約7割を占め、後遺症が残って寝たきりや要介護になる可能性も高く、予防が非常に重要だ。週刊朝日ムック『新「名医」の最新治療2020』では、原因や症状、予防について専門医に取材した。

【図表】脳梗塞の患者数は?かかりやすい年代は?

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 脳卒中には、脳の血管が破裂して起きるものと詰まって起きるものの2種類がある。破裂して起きるのが脳出血やくも膜下出血、詰まって起きるのが脳梗塞だ。

 脳の血管が詰まると、詰まった先に血液が供給されず神経細胞が壊死してしまい、からだの麻痺や言葉がしゃべれない、のみ込めないなど、さまざまな後遺症が残ったり、最悪の場合には死に至る。そのため治療では、一刻も早く詰まりを解消し血管に血液を通すことが重要なポイントになる。

 脳梗塞には大きく分けて、ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓という三つの種類がある。

 ラクナ梗塞は、毛細血管のような細い血管が詰まって起きる。高血圧などが原因で細い血管が異常な変化を起こし、詰まって発症する。歌手の故・西城秀樹さんの闘病でも知られている。

■典型的な症状は顔、手・腕、言葉

 また、アテローム血栓性脳梗塞はより太い血管が詰まるもので、動脈硬化が原因となる。動脈硬化によって脳の血管が細くなったり、脳に近い首の血管の壁が厚くなり、そこに血の塊ができたり、塊のかけらが脳に飛ぶなどして血管が詰まる。

 心原性脳塞栓は心臓の中に血の塊ができ、それが脳まで流れていって血管に詰まり、発症する。心房細動などの不整脈や弁膜症など、心臓に何らかの異常がある場合に起きることが多い。心房細動は加齢によって増えるため、高齢化に伴い心原性脳塞栓の患者も増えている。長嶋茂雄さんがかかったのも、このタイプだ。

 実際に脳梗塞が起きた場合、典型的な症状が三つある。まず一つは、顔の動きが左右非対称になってしまうことだ。本人に「イーッ」と言ってもらうと、片側の動きがおかしいことがわかりやすい。二つめは手と腕で、両手を前に上げたとき、片方の腕が上がらないか、保持できずに下がってきてしまう場合。三つめは、ろれつが回っていない、言葉を間違える、全くしゃべれないなど言葉がおかしいこと。普段となにか様子が違うと思ったとき、これらの症状が見られたら脳梗塞の可能性が高い。兵庫医科大学病院脳神経外科の吉村紳一医師は、次のように話す。

「顔と手・腕、言葉の異常は、脳梗塞の判断方法として非常に確実な見方です。一つでも異常なら脳梗塞の可能性が72%あると言われており、一刻も早く病院に行かなければなりません」

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