その内容は「窓開けのみによる換気でも、標準的な通勤型車両が時速約70キロで、窓を10センチ程度開けて走行した場合、車内の空気は5~6分程度で入れ替わる」「窓開けに加えて、車内の空調装置を併用した場合や、駅でのドア解放により、換気がさらに促進される」としており、鉄道各社は通勤型車両での窓開けを行っている。

 今後「列車の加減速を考慮した換気効果の評価(7月)」、「新幹線・特急車両における換気装置による換気効果の評価(9月)」と、より効果的な換気方法について、研究が進められる予定だ。

 このほか、車両の消毒については、ほぼ全社がプレスリリースで明記しており、車両基地に戻ったタイミングで、不特定多数の乗客が触れる座席やつり革、手すりなどにアルコール、エタノール薬剤、次亜塩素酸ナトリウム溶液などによる消毒が行われている。

■電車の中の2メートルの目安はどのくらい?

 なお、前述したように感染予防の観点からは、人と人とが2メートル程度離れることが望ましいとされている。実際に2メートルの距離を保つことは難しいかもしれないが、電車の中の2メートルの目安については下記の通り。
 
 通勤電車はほとんどの場合、車両の内幅が2.5~2.7メートル程度である。つまり、マスクをしていない人を見かけたら、車両の横幅一杯くらいは離れたほうがいいということだ。
 
 ロングシートに座っている場合はどうだろうか。対面に見えるロングシートまでは、前述した通り2.5~2.7メートル程度離れているので、ある程度は離れたことにはなる。

 なお、京都工芸繊維大学の山川准教授による、感染リスク防止シミュレーションによれば、座っている乗客が咳をした場合、飛沫はその人のひざ辺りに堕ちるので、感染リスクは比較的低いという。ドア付近に感染者が立っている場合は、飛沫が天井と乗客の間にある気流に乗って広がりやすくなるため、感染リスクは座っている場合の3倍近いという。

 この辺りも含めて座る位置を考えたい。なお、通勤電車の座席は1人当たりの幅が43~46センチ程度なので、7人掛けの座席なら、端と端くらい離れていれば比較的安心である。

 新幹線・特急については、JR東日本では「空調装置などで、概ね6~8分程度で入れ替わる」としている。車両の内幅は新幹線で3.3メートル、在来線で2.5~2.7メートル程度、座席間隔は新幹線・特急ともに普通車が約1メートル、グリーン車が約1.2メートルである。

 自由席であれば、できるだけ他の乗客と離れたところに座った方がいい。

 指定席であれば、航空機と同様、シートマップで人の少ないところを指定することをオススメする(みどりの窓口でも、お願いすれば指定席の空き状況をシートマップで教えてくれる)。気休めだが、出入り口に近い、車両両端の方が、換気されやすく、かつ感染を疑う人物が近くにいるときに、距離を開けやすいだろう。

 今回は乗り物内での感染対策について書いたが、ウイルスが付着しているかもしれないエスカレーターや手すりにつかまるときは、あらかじめ手袋をしたり、ハンカチなどで挟んだりと言った、直接触れないための努力はしたほうがいい。筆者は外出時に除菌スプレーを持ち歩き、触れる場所に適時使用するとともに、同行者と一定時間が立ったらお互いにスプレーをかけていた。また、車内での会話も3密の一つであり、できる限り避けるべきだ。

 通勤以外での公共交通機関を利用機会も増えていくわけだが、利用客自身がリスク減少のために情報収集し、常に意識して行動することが、移動自粛解除以降、感染を減らすためにより重要だと、考える次第である。(文・安藤昌季)

安藤昌季(あんどう・まさき)/1973年、東京都生まれ。乗り物ライター兼編集プロダクション「スタジオサウスサンド」代表。『日本全国2万3997.8キロメートル イラストルポ乗り歩き』『旅と鉄道』『鉄道ぴあ』『教えてあげる諸葛孔明』『週刊日本刀』など、歴史や乗り物記事の執筆・企画・イベントを多数手がける。