現在も進行形で行われている、靖国神社境内での『奉納プロレス』も異彩を放つ。

「明治以降の日本の戦争・内戦において政府・朝廷側で戦歿した軍人らを祀る神社」とされる靖国神社(同神社ホームページより)。1910年には相撲場でプロレス興行がおこなわれた歴史もあり、プロレスの聖地としても位置づけられている。

 また力道山の日本プロレスが1961年4月23日に開催した実績があった。それを2005年4月10日プロレスリングZERO1-MAX(現ZERO1)が『大和神州ちから祭り』として復活させ、現在も年1回ペースで開催されている。

 靖国神社大会には大物ゲストが登場することでも話題になる。

 2019年10月26日『靖国神社創設150年記念奉納プロレス』では、猪木が特別ゲストとして登場した。

 ZERO-1産みの親である橋本真也とライバルだった小川直也や元横綱・曙太郎が現れたのも記憶に新しい。

 今年は3月29日開催予定だったが、新型コロナウイルスの影響で11月3日への延期が決定した。ちなみに当日は格闘王・前田日明の来場が発表されており注目される。

 巌流島大会は海からの強烈な風が特徴的。映像を通じても感じられるほどの強風が、戦いの世界をより殺伐としたものに感じさせた。

 そして春先に開催されることの多い靖国神社大会。日本有数の桜の名所での試合は時折、桜が舞い散り幻想的な風景にも包まれる。

 我が国の歴史や四季を感じられる2会場での試合は、結果や内容とともに場所のインパクトも絶大だった。今後も想像を超える場所でのプロレス開催に期待したい。これもプロレスの醍醐味の1つだ。(文・山岡則夫)

●プロフィール
山岡則夫/1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌『Ballpark Time!』を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、編集・製作するほか、多くの雑誌、書籍、ホームページ等に寄稿している。Ballpark Time!公式ページ、facebook(Ballpark Time)に取材日記を不定期更新中。現在の肩書きはスポーツスペクテイター。