思いがけない一言で人を傷つけることも(写真/gettyimages)
思いがけない一言で人を傷つけることも(写真/gettyimages)
発信者情報開示請求書の1枚目。文書は「プロバイダ責任制限法 関連情報Webサイト」から無料でダウンロードできる。http://www.isplaw.jp/d_form.pdf
発信者情報開示請求書の1枚目。文書は「プロバイダ責任制限法 関連情報Webサイト」から無料でダウンロードできる。http://www.isplaw.jp/d_form.pdf
取材協力:三平聡史弁護士 みずほ中央法律事務所代表弁護士。同事務所のホームページ(https://www.mc-law.jp/)でも法律に関するコラムを執筆している。
取材協力:三平聡史弁護士 みずほ中央法律事務所代表弁護士。同事務所のホームページ(https://www.mc-law.jp/)でも法律に関するコラムを執筆している。

 フジテレビで放送され、Netflixでも世界配信されている恋愛リアリティショー「テラスハウス」に出演中の女子プロレスラー・木村花さん(享年22)が5月23日に亡くなった。放送直後から木村さんのSNSに対する誹謗中傷が急増、1日100件近くもの匿名の書き込みがあったという。こうしたことから、SNS上での匿名による誹謗中傷が木村さんを死に追い詰めたとして、大きな議論が巻き起こっている。

【加害者特定の第一歩。発信者情報開示請求の書式】

 匿名で気軽に投稿し、見知らぬ相手や有名人にも直接コメントを返信できるSNS。思いがけない出会いに恵まれたり、充実したやりとりができたりする一方で、横行する匿名の誹謗中傷については以前から問題視されていた。
 自分は匿名であり、相手にバレることはないという慢心によるものかもしれないが、本当にそうだろうか? 最近では被害者が投稿者への法的責任を追及する場合も少なくない。

 たとえば、昨年8月に茨城県守谷市の常磐自動車道で男性会社員があおり運転を受けた後に殴られた事件。これに関連して、「逮捕された男の車に同乗し、暴行の様子をガラケーで撮影していた女だ」というデマ情報をインターネット上で流された都内在住の会社経営の女性がいた。女性は弁護士とともに、デマ情報を公表した人や、真偽を確かめることなく拡散した人、「まとめサイト」運営者などの発信者の情報開示をツイッター社などに求め、特定できれば損害賠償を求める訴えや、名誉毀損罪などの刑事告訴に踏み切る方針を表明した。

 書き込む側は軽い気持ちで投稿しているのかもしれないが、被害者にとっては耐え難い苦痛だ。木村花さんの一件でも、一連の報道を受けてアカウントや誹謗中傷ツイートを次々と削除しているそうだが、削除して済む話ではない。

 被害者が泣き寝入りしないための第一歩としてできるのは、匿名の加害者を特定することだ。その手段が「発信者情報開示請求」。これは、プロバイダ責任制限法で規定されている方法で、ネット上での誹謗中傷による名誉毀損やプライバシーの侵害が発生した場合、プロバイダに対して投稿者の情報(氏名、住所、メールアドレスなど)の開示を請求できる権利だ。

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請求手続は「被害から1カ月程度」のうちに!