■発信者情報開示請求を断られたら…

 証拠を集められたら、掲示板の運営会社やツイッター社など(=コンテンツプロバイダ)に発信者情報開示請求を行うことになる。この請求には決まった書式があり、そこに書き込んで証拠と一緒に送ることになるのだが、「権利の侵害が明白ではない」などの理由で却下されることも少なくない。そうなった場合、コンテンツプロバイダがIPアドレスを開示するよう、裁判所に仮処分申請を行うことになる。開示請求自体は弁護士を通さずに一人で行うことも可能だが、仮処分申請となると弁護士なしでは少々ハードルが高いのが現状だ。

 コンテンツプロバイダへの発信者情報開示請求もしくは裁判所への仮処分申請によって、投稿者のIPアドレスが判明したら、次はその情報をもとに、投稿者が投稿時に使った携帯電話会社やインターネット接続業者など(=アクセスプロバイダ)に対して、「投稿者(=契約者)の登録情報を開示してほしい」という内容の発信者情報開示請求を行うことになる。

 開示請求を受けたアクセスプロバイダは、提出された証拠をもとに検討を行い、投稿者に対して、「開示請求が来ているので開示してもいいか?」と可否を問う意見照会を行う。しかし、匿名で誹謗中傷を行った加害者が素直に「開示してもいいです」と同意する可能性は極めて低く、その前段階としてアクセスプロバイダが開示に協力的であるとは限らない。アクセスプロバイダ側としては、加害者はサービスを利用している顧客であり、相応の証拠がない限りは、氏名や住所といった個人情報をやすやすと開示するわけにはいかないからだ。ここでアクセスプロバイダ側から開示請求を却下されてしまうと、裁判に持ち込まざるを得なくなる。

ここまでの流れをまとめると、

(1)誹謗中傷の証拠を集め、できれば1カ月以内に行動に移す。
(2)投稿者(加害者)のIPアドレスを調べるために、誹謗中傷が書き込まれた掲示板の運営会社やツイッター社など(コンテンツプロバイダ)に、発信者情報開示請求を行う。
(3)請求が認められなかった場合、裁判所に対して投稿者(加害者)のIPアドレスの開示請求の仮処分申請を行う。
(4)投稿者(加害者)のIPアドレスが開示されたら、その情報を元に投稿者(加害者)の個人情報を調べるために、携帯電話会社やインターネット接続業者など(アクセスプロバイダ)に対して、発信者情報開示請求を行う。
(5)アクセスプロバイダから発信者情報開示請求が却下された場合、裁判で開示を求める。
(6)投稿者(加害者)の個人情報が得られたら、その相手に対して損害賠償請求を行う。

ということになる。

次のページ
総務省も制度見直しを検討