開催を宣伝する余裕はなかったが、コロナ禍での挑戦は多くのメディアから注目され、取材を受けた。「ゴールデンウイークは家で陶器市を楽しもう」というキャッチフレーズが広まっていった。

「果たしてお客さんが来てくれるのか、当日も本当に不安でした。でも、スタートして5分でウェブがつながりにくくなって。ご迷惑をかけたのは申し訳ないですが、正直、やった! と思いましたね」(川原さん)

 完成した「Web有田陶器市」は陶器市の開催場所の地図の上に店舗が配置され、市を歩くようにして、各店のサイトをのぞきながら買い物ができる仕組みだ。リアル開催と同じように限定品やお得な商品も販売。期間中、2000円以上購入した場合は送料が無料となり、これは町が負担した。

 最終的に、期間中は47万ものアクセスがあり、売り上げも当初「大風呂敷を広げて見積もった」という1億円をはるかに超えた。1人あたりの平均購入額は7000円。1万円以上する福袋も飛ぶように売れた。また、これまで陶器市の客層は50~60代の女性が大半で9割がリピーターのため、オンラインも同じ層を見込んでいたが、実際は年齢がぐっと下がり、20~40代前半の女性が8割を超えた。

「陶器市は若い人に興味を持ってもらうことを長らく命題にしていたので、うれしい誤算でしたね。それに、普段は福岡からのお客さまが多いのですが、オンラインでは東京や北海道、大阪など、全国の方に買っていただきました。コメント欄に『来年はリアルな陶器市にも行ってみたいです』と書いてくださった方もいて、本当にありがたいです」(同)

 オンライン陶器市の成功で、今、有田町の窯業界は久々に湧いているという。ウェブサイトを閉じないでほしいという店からの要望が多く、終了後もサイトを残している。川原さんも、来年はリアルとオンラインの両方で開催したいと意気込んでいる。

■SNSでお茶マニアに拡散 試飲なしでも購入額が3倍

 百貨店の催事もオンラインで行う動きがみられた。

 大阪の阪急うめだ本店の「ワールド・ティー・フェスティバル」は、2017年から年に一度行われている関西最大級のお茶の祭典。“世界のお茶時間を楽しむ”という副題のもと、紅茶を中心に、フレーバーティーやハーブティー、中国茶、日本茶など、世界のお茶やお茶文化を紹介する。イギリスやインド、ロシア、台湾などから、普段購入する機会の少ないブランドも参加するとあって、1年分の茶葉をここでまとめて買う人もいるという。

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