5対5の8回、阪神は2死ニ、三塁のチャンスに、亀山努がショートへ緩いゴロを放つ。一塁にヘッドスライディングし、際どいタイミングとなったが、笠原昌春一塁塁審の判定は「セーフ!」。この間に三塁走者・新庄剛志が勝ち越しのホームを踏んだ。

 直後、近藤昭仁監督がベンチから飛び出し、笠原塁審に正面から右フックをお見舞い。さらに退場を宣告されると、その背後から掴みかかった。

「無意識だった。気が付くと、行ってしまったよ。良くないね。反省してるよ。監督がカッとしちゃ、ダメだ」と反省する近藤監督だったが、「ただね。自分の中に積もり重なったものがあった。さっきのプレーだけじゃないんだ。今シーズンずっと?いや、去年からだよ。審判ももっと勉強してほしいよ。下手なヤツは辞めてもらいたい。笠原のことじゃないよ」と不満をあらわにした。一方、笠原塁審は「溜まってたものを僕にぶつけられても。いきなりですから、考えられません」と憮然たる表情。

 試合は、監督退場後、9回に2点差を追いついた横浜が延長13回にサヨナラ勝ち。「まあ、勝てて良かったね」と胸をなで下ろした“熱き指揮官”近藤監督も、昨年3月に帰らぬ人となった。

 味方の連続ミスにぶち切れた投手がマウンド上で仰向けにひっくり返ったり、グラブを投げつけるなど、派手な大立ち回りを演じたのが、2007年10月1日の阪神vs横浜(横浜)だ。

 勝てばCS進出決定の大事な試合。阪神の先発・下柳剛は気迫の投球で4回まで無失点に抑えた。

 だが、5対0とリードの5回、先頭の内川聖一を四球で歩かせたのが、ケチのつきはじめ。石井琢朗を遊飛に打ち取り、1死を取ったが、呉本の二ゴロをセカンド・関本健太郎が二封できず(記録は野選)、1死一、二塁とピンチを広げてしまう。

 直後、下柳はいら立つ気持ちを抑えられず、しばしマウンドの周辺をウロウロした。

 それでも何とか気持ちを落ち着かせ、次打者・仁志敏久を併殺コースの遊ゴロに打ち取ったかに見えたが、なんと、この打球を田中秀太がファンブルしてしまう。

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「何で捕れないんだ!」