――子供たちが自宅で動画を見て過ごす時間が増えた今、YouTuberの存在も重要になってくると考えますが、どのようにお考えでしょうか。

伊沢:YouTubeのチャンネル数は近年爆発的に伸びており、その中には教育コンテンツを扱うものも存在します。むしろ、既存の教育分野にいた、肩書やバックグラウンドを持っている方の参入が増えており、学習メディアとしての役割は無視できないものになっていると言えるでしょう。

 実験動画などは特に使い勝手がよく、字幕生成機能などを使えば世界各国の科学者が行うおもしろ実験が見られます。いい意味で小回りがきくというか、「こんなにちっちゃいジャンルだけを丁寧に取り扱うのか」「こんなにハイレベルなことをやってくれるのか」など、レベル感や知りたいことに合わせた学びを得やすい、というのも、教育機関の授業などとは違った強みかと思います。

――科学実験の動画は、子供たちにも人気ですよね。このようにYouTubeで学ぶ動きは、ここ数年で一気に進んでいるように感じます。

伊沢:YouTube運営側も「学び」カテゴリを作ったり、関連動画が表示されないことでエンタメ動画に流れてしまわない「学びの再生リスト」を設けたりと、学習ツールとしての利用を推進しています。後者は現在、老舗である『とある男が授業をしてみた』チャンネルにしか実装されていないのでまだまだ発展途上なのですが、それだけYouTube内で学習コンテンツの影響力が増してきた、数が増えてきた、ということなのかと思います。

 とはいえもちろん、YouTubeで得られるのは学びの一端です。ファクトの甘いもの、事実に誤りがあるものも少なくありませんし、十分な背景に基づかない情報が多数置いてある場です。信頼に足るごく一部のチャンネル以外は、学校での学習を完全に代替できるものではなく、あくまで補助的に使ったり、興味をつなぐ、学習意欲を喚起するものとしての利用がよいでしょう。YouTubeでまず基礎的な知識を入れ、それについて確認がてら教科書で深く調べてみるとか、そういう使い方だと美しいですね。

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