――伊沢さんがCEOを務める「QuizKnock」でも、学びをサポートする動画をYouTubeで配信されていますね。

伊沢:我々はあくまで既存の教育機関ではないですし、「授業をする」「ものを教える」というところからは離れた活動を行っています。我々の活動はむしろ「学びを面白がる」「どこが面白いのかお伝えする」「楽しみ方を共有する」という視点に立つもので、「教える」というよりは「沿う」、一緒にエンジョイする感じです。近所にいる年上のお兄ちゃん的な。なので、もちろん学びも多少はありますけど、それ以上にQuizKnockでやる気になったり、学ぶってカッコいい! みたいな価値観を共有できたらもうそれで最高だなと思っています。

――新刊の『勉強が楽しくなっちゃう本』(朝日新聞出版)でも、イヤイヤ勉強するのではなく、「楽しいから」「自分がやりたいことを実現するため」の勉強がコンセプトになっていましたね。自然と勉強が楽しくなっちゃうための価値観が見事に誌面で表現されていました。

伊沢:ありがとうございます。結局学校で学んだこと の使いみちだったり役割だったりって、使ってみないとわかりづらいものなのかなと思うんです。しかも、使う場面が訪れづらいものも多い。いざというときにないと困るけど、その「いざ」がいつ来るかわからない、みたいな。防災グッズのような側面があるのかなと思っています。 なので「学校の勉強に意味はあるの?」みたいな議論が定期的に出てくる。だからこそ、「使える/使えない」という安いコンセプトではなく、その学び自体の面白さにフォーカスしてあげることができれば、より自主的に学びへと向かっていけるようになるのかな、と思うんですよね。

 我々は我々の活動のコンセプトを「楽しいから始まる学び」と呼んでいるんですが、QuizKnockで我々がゲラゲラ笑いながら口にしている単語に対して「なんでこいつら、ここで爆笑できるんだ?」となってもらえたら勝ちです。

 とはいえ、最近は収録自体が難しくなっているので、より直接的な学びのサポートもやろうとしています。サブチャンネルでは「#クイズノックと学ぼう」というキャンペーンを3週間やって、みんなで毎日1時間、我々と一緒に勉強しましょう、というライブ動画を出し続けました。その中で学習習慣の話とか、1時間の勉強をどうデザインしていくかとか、使えるTipsを織り交ぜながら進めています。その他にも、10時間くらいかけて曲と詞を書いた「ラップで学ぶ十字軍の歴史」の動画だったり、最近証明成功が認められた数学上の問題「ABC予想」について何が面白いのかを語る動画だったり、普段のエンタメ路線に比べると学習寄り のリリースをしています。あくまで既存教育機関との棲み分けを、というスタンスを取っていましたが、その構図自体がなくなっているので、「知ること」の機会を増やそう、という狙いです。

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