――面白い試みですね。年上のお兄さんたちから「知ること」をYouTube動画で吸収できるコンテンツは、今まさに求められていると感じます。ポスト・コロナには、勉強の見方、学習方法、教育システム自体に大きな変化が現れそうですね。

伊沢:こればかりはCOVID-19がどのように展開していくか、そしてそれをどのような施策で迎え撃つのか……という外部要因に依存するので、一概に語ることはできません。事の大小はあれど、学事歴や入試諸制度をはじめとして教育のシステムには変化が起こるだろうし、余波は年度をまたぐと思います。

 しかし、「知ること」と「知ったことの反復」を両立させる、という学びの本質は変化していません。むしろ、それを適切に捉え、目的を見失わず、手段を巧みに変容させることが求められていると思います。 手段もしくは目的と、それを達成するための選択肢でしかない手段を取り違えないことですね。リモート学習やYouTubeも含めて、この期間に知名度が上がった学習方法、メディアも少なからずあり、それゆえに「知っている選択肢が増えた」ということもあるかも知れません。逆に、勉強の進め方や自己管理などは、学校や塾などの停止に伴い情報を得づらくなったでしょう。情報を得て、それらを自分の現状を踏まえて取捨選択し、甘やかさず無理せず自己管理する。より学びの本質を捉えた人が有利に事を進めるでしょう。その点は変化ですね。

 選択肢には変容があれど、何が学びにとって大事 か、何が学びであるかは変化しません。今得られない情報について考えすぎるのはやめ、現状の自分を客観視するところから色々なことがスタートすると思います。

伊沢拓司(いざわ・たくし)
日本のクイズプレーヤー&YouTuber。1994年5月16日、埼玉県出身。開成中学・高校、東京大学経済学部を卒業、東京大学農学部大学院中退。在学中は、東京大学クイズ研究会(TQC)に在籍。「全国高等学校クイズ選手権」第30回(2010年)、第31回(2011年)で、個人としては史上初の2連覇を達成。TBSのクイズ番組「東大王」「グッとラック!」(共にTBS系)にレギュラー出演中。2016年には、エンタメと知を融合させたメディア「QuizKnock」を立ち上げ、CEOを務めている。