■指定席はカウントされていない!?優等列車の乗車率

 実は、料金を収受する特急列車(JRの場合)と普通列車(通勤列車や快速など)では定員の考え方が異なるため、乗車率についても数字の示す意味合いもやや異なる。

 まず優等列車の定員は、座席の数となる。そして指定席を連結する列車が大部分だが、指定席は指定券を所持していない乗客が立ち入ることはできないという原則があるため、理論的には乗車率100%(満席)を上回ることはない。

 つまり、優等列車の乗車率は主に自由席で算出されることになっている。そのため、全車指定席の列車は混雑率の発表の対象外となることが多い。

 東北新幹線系統の「はやぶさ」「こまち」は東京~盛岡間で全車指定席となるため、原則として乗車率は発表されていない。だが、前述の4月29日の報道では、「はやぶさ」(東京~新函館北斗間)「こまち」(東京~秋田間)についても言及されている。

 4月以降、指定車を含めて列車全体の乗車数が目視で計測できるレベルにまで低迷していることに加え、利用者の減少を可視化することに対する社会的な要請も高まっていることから発表に踏み切ったものと思われる。

 なお、混雑時には自由席からあふれた乗客が指定席車のデッキに入りこむことがあるが(ルール違反だが)、こちらも集計の対象外である。

 例年のゴールデンウィーク期間中は、最も混雑する優等列車では乗車率180%を記録することもあるが、「のぞみ」の場合、乗車率の計測対象となる自由席は1号車が65名、2号車が100名、3号車が85名と合計250名(N700系の場合)。

 乗車率180%の場合はこの3両に450名が乗車していることになり、この3両のデッキや通路に200名が立っている状態である。当然、この状態は利用者にとっては苦痛を伴う状態であり、トイレに行くのも難儀することだろう。

 コロナ禍が顕在化した2月以降、全国の優等列車は軒並み乗車率をダウンさせている。優等列車では車掌が乗車人員の実数(指定席も含む)を目視で計測し「乗車人員報告」と呼ばれる報告書に記載することになっているが(JRの場合)、これは利用実態に合わせたダイヤ設定(増発や減便)を行うデータとして活用することを目的としている。通常、乗車率が低迷する列車は需要がないものと判断され、廃止もしくは他の列車と統合される運命にあるのだが、今回は「3密を避ける」という社会的な要請に応えることを目的に、ガラガラの状態でも敢えてそのまま運転する施策が続けられている。コロナ禍が明けた際に即応できる体制を維持したいという鉄道会社側の気概が伝わる。

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通勤電車の混雑率とは?