とはいえ、各社で多客期の臨時列車の運転は見送られている。さらに、JR九州のようにゴールデンウィーク期間中に在来線特急列車(定期列車も含む)を完全に停止したケースもある。移動する手段を物理的に排除する手法は、コロナ収束を願う多くの地域住民の支持は厚かったものの、不要不急な移動手段を途絶することにもつながり、賛否が分かれるところではある。

■座席×3倍程度が定員となる通勤電車の混雑率

 一方、通勤電車の混雑率の考え方は優等列車とは大きく異なる。通勤電車の定員には座席数の3倍以上の立席(座席なし)をあらかじめ盛り込んでいるため、座席は埋まっているものの立客がいない状態の混雑率は30~35%程度となる。

 そのため、200%の混雑率の通勤電車では座席の6~7倍程度の立客がいることになる。いかに激しい混雑であるかが理解できよう。

 コロナ禍以降、徐々に進んだテレワークと、政府からの出勤率低減要請により都市部の駅の利用者は日に日に減少している。朝夕の通勤電車の混雑率も軒並み低下しているようで、筆者の同業者からも「コロナ禍前の1/3から1/4程度に落ち込んだのではないか?」との話が聞こえてくる。

 緊急自治宣言発令後は、通勤電車の本数を削減し、移動がしにくい状況を作り出すことにより結果としての移動自粛を達成しようという動きもあったが、こちらも「3密防止」の観点から、混雑率の低下した現在の状況が当面継続される模様。大阪メトロのように平日を土日ダイヤに切り替えた鉄道会社もあり、今後コロナ禍が長期化した場合、本数削減に踏み切るケースが増加する蓋然性は高いと言えるだろう。

 世界を未曽有のパニックに陥れた新型コロナウイルス。国内の鉄道に与えた影響も甚大であり、各社の経営に深刻な影響を与えている。

 4月15日にはJR北海道が利用者激減(売上減)から社員の一時帰休を発表するなど、国内の鉄道も戦時中にさえ経験したことのない荒波にもまれ続けている。
  
 一刻も早いコロナ禍の収束、そして鉄道の利用者数回復を願ってやまない。(文・鉄道ライター/川崎俊哉)