ナインティナインの矢部と岡村(C)朝日新聞社
ナインティナインの矢部と岡村(C)朝日新聞社

 4月23日深夜放送の『岡村隆史のオールナイトニッポン0』(ニッポン放送)でナインティナインの岡村隆史が不適切な発言をしたことが大問題に発展している。岡村の所属事務所である吉本興業は本人の名前で謝罪文を発表した。

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 翌週の4月30日深夜の放送回では、岡村がこの問題について何を語るのか注目が集まっていた。いざ蓋を開けてみれば、そこには誰も予想していなかった意外な展開が待ち受けていた。

 冒頭から岡村は重々しい口調で謝罪と反省の言葉を繰り返した。ひとつひとつ言葉を選んで慎重になっているため、「えー」「んー」などの間投詞がやたらと目立つ。プロの芸人が人前でこんな話し方をすることはめったにない。間投詞を挟まないというのはしゃべりの基本である。そんな基本フォームすら完全に崩れてしまうほど、岡村は狼狽し、意気消沈していた。

 このまま1人で2時間の番組が続けられるのか。リスナーの誰もが不安を感じたところで、スタジオ内に突然、人が入ってきて口を開いた。

「やったな、お前。やってもうたな」

 その声の主は相方の矢部浩之だった。岡村は急な事態に戸惑いながらも、迷惑をかけた相方に対して「ごめんなさい」「申し訳ない」と謝罪の言葉を漏らした。

 矢部は今回の舌禍騒動をある意味で「いい機会」だと捉えていた。それは、ナイナイというコンビがあまりいい状態ではないと感じていたからだ。この事態はナイナイにとっても緊急事態である。だから「公開説教」をしに来たのだと矢部は高らかに宣言した。

 宣言通り、その後は矢部から岡村に対して、次々に核心を突くような厳しい言葉がぶつけられた。特に、問題となった今回の発言については、彼を放置して甘やかしてきたスタッフやリスナーにも責任があるとまで述べた。矢部が、というよりもタレントが、マスメディアでここまで踏み込んだ話をするのはめったにないことだ。

 その後も、岡村の人間として欠けているところ、甘えているところ、女性蔑視の考えを持っているところなどを逐一指摘していった。問題発言の根底にあるのも、困ったら「風俗ネタ」に逃げるという岡村の悪癖によるものだとして、そこを改めなければいけないということを訴えた。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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矢部が抱え続けてきた岡村への不満と不安