――自分の思考に向き合うこと、自分に本当に役立つものを見極めることは、子どもだけでなく、大人も立ち返るべきことかもしれませんね。ちなみに、親御さんがお子さんにサポートしてあげられることは、どんなことだとお考えになりますか?

伊沢:親御さんとしては、そのような「しなければならない」にお子さんが陥らぬよう、そして陥らせることのないよう、「第一の客観視点」であって欲しいなと思います。「塾の宿題のどこに時間がかかっているの?」「この勉強法を選んだのはどうしてなの?」など、本人がなかなか自分でたどり着けない客観的視点から、責めない形で質問を投げかけてあげると、思考は整理されていくはずです。よい壁当て役になり、本人の可視化できていない悩みや原因を映してあげる鏡のような存在。それが結果としては点数や学力向上につながる在り方なのかなと思っています。

――これまで学校や塾のカリキュラムに頼りすぎていて、自分で勉強のやり方をデザインすることに慣れていない子は、具体的にどんなことを行えばよいでしょうか。

伊沢:「自分でデザインすること」はもちろん大事なんですが、そもそもが難しい課題でもあるんですよね。いきなりできることではないので、まずは自分の勉強について振り返って、少しずつ改善していくというただそれだけ、スモールステップからだと思います。むしろそのスモールステップの組み合わせこそが、自学自習で最も大事なことかもしれません。最初は一日の反省をまとめるだけでもOKです。それを繰り返しているうちに勉強に対する視野が広くなり、段々と勉強のやり方を自分でデザインすることが効果的になってきます。あわよくば、そうやって自分をコントロールしながら課題を達成するのが楽しくなるかもしれません。まずは、楽に構えて、ちょっとずつ成功体験を積み上げるところからですね。

――「スモールステップ」を組み合わせて、勉強をデザインすることを楽しめるようになれば、自信にもつながりますよね。

伊沢:自分のペースで、というのは、「自分の力で」とイコールではないという視点も大事です。例えば、自学自習のペース管理が難しいとき、必要になるアプローチは「もっと大人になって、きっちりやりなさい」ではなく、「じゃあ、学校の時間割通りに勉強してみたら」なのです。もちろんこれは一例ですが、要するに、使えるものは使えばいい。この例で行くと、学校のカリキュラムは適度に体育や音楽があって、同じ頭の使い方ばかりしないようにできていますから、その時間を休憩に当てれば家で適度に学びの習慣を作れるはず……みたいに考えられたら選択肢が広がります。

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