――「自分の力で」と力みすぎるとしんどくなってしまいますが、「使えるものを上手く使ってみる」という視点をもてば、気持ちも楽になりますし、効率的にもなりますよね。

伊沢:そうですね。また、クオリティ管理なら、新刊『勉強が楽しくなっちゃう本』(朝日新聞出版)に出てくる「困難分割シート」「マインドマップ」などのツールも使えます。これらのツールに勉強の悩みや自分の現状をぶつけていくことで、今自分がやらなければいけないことが客観的に浮き彫りになる。そうすれば、最初に言ったような「勉強の振り返りと改善」がやりやすくなってきますよね。このように、よくできているものに頼ることも、ひとつのやり方です。自学自習で試されるのは自分自身の中にあるものではなく、自分の外側にあるものも自分の役に立たせる、という力なのです。

――伊沢さんのご著書『勉強大全』(KADOKAWA)でも、「勉強法の大切さ」や「受験生活の作り方」についてご執筆されていますね。

伊沢:『勉強大全』の主軸になる考え方なんですが、勉強のやり方や方法論を、自分にマッチする形で構築できたのだとしたら、きっとそれって他のことにも応用できると思うんですよね。勉強以外の「努力して達成すること」にも通用するやり方を築き上げられたらかなりお得なはずです。しかも、勉強って、スポーツとか芸術に比べると、正しい努力をしたら結果に結びつきやすいんですよね。なので、方法論を身につけるのにはもってこいな題材だと思うんです。「勉強のやり方をデザイン」は、「いろんなことのやり方をデザイン」に化ける可能性をもっているものなんだ、ということは、今こそより響きやすいテーマかも知れませんね。

――「勉強の原理」を見据えた上で、自分に適した勉強の「方法」や「手段」を身につける。『勉強大全』の基本理論は、自学自習が必要な今最も大切だと感じます。最後に、外に出られない自宅学習のみでは、生活のリズムが乱れたり、友達と遊ぶこともできずストレス過多も心配ですよね。

伊沢:そうですね。僕も受験生時代、自習室と学校と家を往復して勉強するだけの生活でしたが、今思うと合間の移動や、そこで聴く音楽、たまの外食などから癒しと活力を得て乗り切ることができました。そういう「スキマ」を見つけづらい生活というのは苦しいものと思います。ただ逆に言えば、そのような小さな「スキマ」もやすらぎになることは事実です。「家にいるなら、勉強しなきゃもったいない」なんて思っちゃうと、息が詰まって辛くなります。小さな「スキマ」や、それこそ休憩そのものを大事にすることで、結果的に勉強のクオリティも上がるはずです。

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