――無意識にやすらぎを生んでくれていた「スキマ」が乏しい環境下で、勉強を継続していくためには、適度な休憩や気晴らしを取り入れることも必要ですね。特に受験生の精神的な負担は大きいと考えますが、何かアドバイスをいただけますでしょうか。

伊沢:そもそも僕は、努力というのは量と質の掛け算だと考えています。量をこなしても質がなければ意味がなく、質の高いものもあまりやらなければ結果にならない。ここで言う質のひとつが「集中力」です。家で集中を保ち続けるのは大変。なら、保ち続けなくてもいいんです。低集中でダラダラやるより、高集中短時間のほうが結果が出るケースもあります。僕はそのタイプだったので、勉強していて集中が落ちてきていると感じたら、あえて勉強をやめて、数分休憩したあと再開……というルーティーンで「高集中での勉強」を維持していました。なので、休憩のとり方というのは、勉強を活性化させうる、大変大事な要素です。

 自分なりの休憩の取り方、というものを見つけるのには、今はよい期間かもしれません。例えば家にいるから「ふだん授業をやってる50分間は集中しなきゃ」と考える必要はありません。教室より集中しづらいと思う人もいますからね。東大生が一日12時間受験勉強していたからといったとしても、今の自分にそれができないのであれば無理する意味もないです。一日6時間が精一杯だとして、一カ月後には7時間できるようになっていれば大成長です。今の自分に合った休憩の取り方をして、無理をしないこと。特にこんな状況なので、精神的負担を甘く見てはいけません。

「自分の勉強をデザインする」ことは、自分に厳しすぎず、甘すぎず、そのときそのときの状態を考えながら適切な対策を選ぶことです。家の中でできるストレス発散法を見つけるのも、長い目で見れば勉強技術のひとつだ、と思って大丈夫です。何よりも「無理しない」ということは意識していきたいですね。

伊沢拓司(いざわ・たくし)
日本のクイズプレーヤー&YouTuber。1994年5月16日、埼玉県出身。開成中学・高校、東京大学経済学部を卒業、東京大学農学部大学院中退。在学中は、東京大学クイズ研究会(TQC)に在籍。「全国高等学校クイズ選手権」第30回(2010年)、第31回(2011年)で、個人としては史上初の2連覇を達成。TBSのクイズ番組「東大王」「グッとラック!」(共にTBS系)にレギュラー出演中。2016年には、エンタメと知を融合させたメディア「QuizKnock」を立ち上げ、CEOを務めている。