SLEはその一つであり、膠原病と総称される病気のなかでは、関節リウマチとともに患者数の多い病気だ。20~40歳代の女性に多く発症し、日本全国で患者数は約6万人だ。男女比は1対9で圧倒的に女性が多いが、かのマイケル・ジャクソンもこの病気だった。

「SLEの症状は、先述した自己免疫異常により、発熱、全身倦怠感、関節、皮膚、内臓などにおける障害が一度に起こったり、時間差で次々と起こったりする厄介な病気です。患者さん一人ひとりによって、出現する症状や障害される臓器の種類や程度はさまざまであることも特徴です」

 皮膚症状のなかで代表的なものは、頬に出る赤い発疹がチョウが羽を広げているような形である、蝶形紅斑(ちょうけいこうはん)だ。表皮の角質層が厚くなりはがれて脱落する、角化性鱗屑(かくかせいりんせつ)という隆起を伴う紅斑も特徴的で、顔面、耳、首回りに発症しやすい。光線過敏症、口内炎、脱毛、関節炎が生じることもある。
 
 臓器障害では、腎炎、血球減少症、胸膜炎、心膜炎、精神神経障害などがある。

「このようにさまざまな障害が現れますが、病気発症当初の症状によっては、SLEの発見が遅れることもあります。もちろん最初に現れた症状にしたがって該当する科を受診することは大切なのですが、SLEという病気についても知っておいていただき、先ほど挙げた複数の臓器に症状が出てきた場合はできるだけ早く、膠原病の専門医を受診することをおすすめします」

 専門医を受診すると、血液検査、画像検査、病理検査などによる結果をもとに、分類基準に基づいて診断され、各症状に対する治療がおこなわれる。薬物療法が基本だ。

「現在、『SLE診療ガイドライン』というものにより、それぞれの症状に対する標準治療が確立しています。患者さんの病気の活動性を低く抑えたりするなど、寛解という根治に近い状態になることを目指して治療をしていきます」

 皮膚疾患の場合は、治療の基本はステロイド外用剤による薬物療法だ。効果不十分であればステロイドを内服する。ステロイド単独では治療が困難な場合やステロイドの使用量を減らしたい場合、そして、倦怠感などの全身症状、筋骨格系症状がある場合には、抗マラリア薬であるヒドロキシクロロキン(商品名:プラケニル)の投与を考慮する。皮膚以外の症状にもこの薬が第一選択として使われている。

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今後期待される新薬の出現も