東京女子医科大学病院膠原病リウマチ痛風センター・センター長で主任教授の針谷正祥医師
東京女子医科大学病院膠原病リウマチ痛風センター・センター長で主任教授の針谷正祥医師

「膠原(こうげん)病」という病気の名を耳にした人はいても、それがどんな病気かわかる人は少ないのではないだろうか。膠原病は病名ではなく、総称としての呼び名であり、該当する病気は30種類以上にものぼる。なかでも、患者数の多い「全身性エリテマトーデス」について、専門医に取材した。

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 全身性エリテマトーデス(以下SLE)とは、膠原病と言われる病気の一種だ。まず、膠原病とはどういう病気なのかの説明が必要だろう。全国で一番数多くの膠原病患者を診る、東京女子医科大学病院膠原病リウマチ痛風センター・センター長で主任教授の針谷正祥医師はこう説明する。

「膠原病とは、免疫の異常によって、皮膚、関節、血管、臓器などに急性、あるいは慢性的に生じる炎症性の疾患を総称しての呼び名です」
 
 もともと外界から自分の体のなかに入ってくる異物を認識して排除するのが免疫系だが、誤って自分自身の細胞や組織を非自己と認識して攻撃して炎症や変性をおこすのが「自己免疫異常」だ。膠原病とは、体のさまざまな部位でこの自己免疫異常が起こることで発症する。したがって、体のどの部分で発症するかがわからないため非常に厄介なのだ。

「病気の原因が患者さん自身の体のなかにあるため、原因を排除するのが難しい病気なのです」(針谷医師)
 
 多くの膠原病は、遺伝的要因と環境的要因の両者がそろうと発症すると考えられている。

「遺伝的要因とは、免疫にかかわる白血球のなかの重要な分子HLAと、遺伝子情報を担うDNA塩基配列の変異です。環境的要因とは日光を浴びること、喫煙、粉塵にさらされること、性ホルモン、薬剤、加齢などです。これらの要因によって自己免疫異常が起こると、体のなかで自己抗体やサイトカイン(免疫細胞から分泌されるタンパク質)が産生され、炎症や線維化を起こすのです」

 現在、膠原病と総称される病気は、30種類以上にものぼる。そのうち、厚生労働省が指定難病として指定し、治療にあたって公費補助が受けられる病気が21疾患ある。

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膠原病と総称される病気の中で患者数が多いのは関節リウマチ