新型コロナウイルスの感染拡大をうけ、緊急事態宣言の対象地域が16日、ついに全国に広げられた。各都道府県の知事は法令に基づいて外出やイベントの自粛要請をおこなうことができる。商業施設などでは営業自粛の動きが広がり、小中学校や高校、大学も軒並み休校が相次いでいる。

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 一方で、判断がわかれているのが保育の場だ。緊急事態宣言が最初に発令された7都府県(東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡)の特別区と政令指定市、中核市を対象に朝日新聞が行った調査によると、回答を得た52自治体のうち、27自治体は登園自粛を求め、そのほとんどで登園する園児は通常の半数以下に。13自治体は原則休園、10自治体は登園対象を限定し、受け入れを縮小しているという。多くは休園しているものの、一部では受け入れを続けざるをえない園もあるようだ。

 子どもは大人に比べ、感染しても重症化しにくい傾向があるとされている。だが、感染制御学に詳しい東京医療保健大学の菅原えりさ教授は、保育園について「大人数が密集して濃厚接触するのは避けられない」と指摘する。

「確かに、海外の研究などでは子どもの重症化する割合の低さが指摘されています。ですが、かえって子どもは感染しても症状が顕在化しにくく、気づかずにウイルスを広げてしまう恐れがある。大人に限らず子どもたちのなかに“隠れ陽性患者”が存在している可能性も考えられます」

 保育士を介した感染の可能性もある。

「保育園は“3密”がそろってしまう恐れがあります。子どもはどうしても動き回ってしまいますし、保育士の方が子どもを抱っこしたり、走り回る子を制止するときに接触してしまうのは避けようがない。子どもを預けなければ生活が立ちいかなくなる家庭もありますから、やむにやまれず開園する事情はわかりますが、感染リスクが高まりやすい場所であることを強く認識してほしい」(菅原教授)

 もちろん子どもが重症化リスクが低いからと言って「安心だ」とたかをくくってはいけない。日本小児科学会は、「小児患者が重症化する割合は成人と比べるとかなり低いようです」としつつも、「しかし、成人同様に呼吸状態が悪くなることもあります。年齢の低い乳児などは注意が必要です」(日本小児科学会HPより)と警鐘を鳴らしている。

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「判断に迷う…」と保護者