スクリプス研究所は、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツが創設したビル&メリンダ・ゲイツ財団によって支援された1万5000を超える既存薬のデータを保有しており、今回の共同研究では、それらをエクセンシアのAIによってスクリーニングし、新型コロナウイルスによる肺炎への治療効果があると考えられる既存薬を探索する。

 これらの既存薬は人体への安全性がすでに検証されているため、効果が認められた際には、通常数年をかけて行う臨床試験を大幅に短縮することができるという。

 既存薬を当初の想定とは別の疾患に転用するための研究は、製薬業界では「ドラッグリポジショニング」と呼ばれている。

「エクセンシアCEOのアンドリュー・ホプキンスは、前職のファイザー社でドラッグリポジショニング研究の責任者でした」と、エクセンシアの日本支社の代表取締役である田中大輔氏は言う。

「もちろん、その治療に完全に特化した新薬を開発するためには、一から研究を始めなければなりません。しかし患者が増える一方の状況では、ドラッグリポジショニングによる早急な開発が求められています。今回のプロジェクトにおいても、年内には、新型コロナウイルスに効果のある既存薬の探索が完了すると考えています」(田中氏)

(文・白石圭)