大人は思いつかないような、子どもの素朴な疑問や不思議。子どもの頃から、納得できる答えが得られないままになっていること。そんな質問に、テレビやラジオなどでも活躍する明治大学教授の石川幹人(まさと)さんがお答えします。ジャンルを問わず、答えが見つからない質問をお寄せください!(https://publications.asahi.com/kodomo_gimon/)。採用された方には、本連載にて石川幹人さんが、どこまでもまじめに、おこたえします(撮影/写真部・掛祥葉子)
大人は思いつかないような、子どもの素朴な疑問や不思議。子どもの頃から、納得できる答えが得られないままになっていること。そんな質問に、テレビやラジオなどでも活躍する明治大学教授の石川幹人(まさと)さんがお答えします。ジャンルを問わず、答えが見つからない質問をお寄せください!(https://publications.asahi.com/kodomo_gimon/)。採用された方には、本連載にて石川幹人さんが、どこまでもまじめに、おこたえします(撮影/写真部・掛祥葉子)

※写真はイメージです (GettyImages)
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「人間は進化したら何になるの?」
「どうして、“わたし”は“わたし”なの?」

 発想豊かな子どもの疑問に大学教授が本気で答える連載「子どもの疑問に学者が本気で答えます」。子どもに聞かれて答えられなかった疑問でも、幼い頃からずっと疑問に思っていることでも、何でもぜひお寄せください。明治大学教授の石川幹人さんが、答えてくれますよ。第13回の質問は「どうして悪いことをする人がいなくならないの?」です。

*  *  *

【Q】どうして悪いことをする人がいなくならないの?

【A】悪いことだと思っていない人がいるからです。

 最速の動物はなんでしょう。アフリカの草原にすむチーターですね。数秒で時速百キロまで加速して、ガゼルなどの獲物を見事に仕留めます。ところが、獲物を仕留めたことをハイエナに見つかると獲物を横取りされてしまいます。チーターは、足は速いのですが噛みつく力が弱く、ハイエナと戦うと負けてしまうので、横取りされるのもやむなしなのです。

 このようなハイエナは“悪い動物”でしょうか。たしかに、人間から見たら、他者の成果を横取りするので、“悪い動物”に見えます。しかし、ハイエナは横取りを悪いこととは思っていないでしょう。自然界の厳しい競争の中で生きるために、横取りもひとつの生存手段なのです。

 横取りをなくすためには、横取りをしなくとも普通に努力していれば生きていける環境をつくる必要があります。人類は、みなで協力し支え合うことによって、そうした横取りをしなくてすむ社会を築いてきました。

 現代社会では、努力して得られた成果はその人のものであり、横取りはいけないこととしています。そうしておかないと、横取りばかりが起きて、新しい成果に挑戦する人がいなくなってしまいます。そこで、泥棒のように横取りばかりをしていれば、警察が取り締まることになるわけです。

 では、悪いことをする人がいなくならないのは、警察がちゃんと取り締まってくれないからでしょうか。いえ、そんなに単純ではありません。明らかに悪いならば、取り締まりの対象なのですが、そうとも言えないことが社会にはたくさんあるのです。

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石川幹人

石川幹人

石川幹人(いしかわ・まさと)/明治大学情報コミュニケーション学部教授、博士(工学)。東京工業大学理学部応用物理学科卒。パナソニックで映像情報システムの設計開発を手掛け、新世代コンピュータ技術開発機構で人工知能研究に従事。専門は認知情報論及び科学基礎論。2013年に国際生命情報科学会賞、15年に科学技術社会論学会実践賞などを受賞。「嵐のワクワク学校」などのイベント講師、『サイエンスZERO』(NHK)、『たけしのTVタックル』(テレビ朝日)ほか数多くのテレビやラジオ番組に出演。著書多数

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