「ときどき『これ、いいかなぁ?』と娘や孫に作るもの、決めるのに聞きます。参考に、『これいいよ~』言うてくれるときもあります。野菜とかエビやらイカ、お肉、そんなものが大好きやからね。好きな食べ物を作りたいなぁと思うて作りますね。大きなものもあります」

 さらに、それらが暮らしてきた地元の行事などにもつながり、この本『90歳セツの新聞ちぎり絵』もお正月から始まり、春夏秋冬、歳時記のような作りになっている。編集した里山社の清田麻衣子さんは「生活史の中の一ページとして」、また「ものを大切にする昔の人の価値観」をすくいあげて本を編んだという。

 たとえば作品のひとつ「剣先イカ」には「おめでたい時に、農業してる人ばっかり集まって、村の氏神祭で神さんに備えますねん」というセツさんの言葉が添えられている。セツさんに重ねて伺ったところ、「剣先でもいいし、スルメイカでも、ないときはサバを丸たで備えたりもします。昔からずっと続いています。私はお正月、お彼岸、お盆、仏さんの命日、欠かさんとお備えさせてもらってます。気が向いたときにはお参りもさせてもらってます」と、セツさんの日々を大切にする様が見えてくる。

■「お化粧、私、欠かせたことないです」

――セツさん、運動は定期的にされてますか?

「お風呂の湯船の中に入って、手やら足やら腰やら、動かしてます。毎日300回。身体がラクになります」

――朝起きたら、まず何をしますか?

「朝起きたら、まずは新聞出してきますねん。それからお化粧して、朝ごはん、よばれます」

――えっ? お化粧ですか?

「私、欠かせたことないです。若いときは仕事仕事で追われてましたからね、下地だけ塗ってたらいいと母親が言うからそうしてたら、やっぱり脂が浮いてきたり、あかんわ言いまして。今は娘がずっと化粧品を取り寄せてくれてます。この年になったら顔にシミができましてん。シミ隠しせんとね。ちょっとでも人さまに顔合わすのにもしますし、すると元気でてきますねん」

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