具体的な扶養の方法については当事者間で協議することになるが、話がまとまらない場合には家庭裁判所が親族らの経済力などを総合的に判断して決定することになる。

■愛人に対して慰謝料を請求できるのか

 次に整理したいのが、愛人に不倫の慰謝料を請求できるのかである。結論から言えば、「妻は慰謝料を請求できる」(鮫島弁護士)。ただ、不倫には“時効”がある。

「不倫相手を知ってから3年。これが慰謝料を請求できる期限になります。相手の名前と住所を知っていて、裁判を起こせる状態になってから3年が過ぎると時効が成立します」

 つまり、ケイコさんは最後の“愛人”女性に限り、過去3年分の不貞行為についてだけ慰謝料請求ができるということになる。
 
 鮫島弁護士によると、不倫が原因で離婚に至った場合、「慰謝料の相場は100~300万円」だという。だが、ヨシオさんと愛人はともに70歳を超える高齢だ。この点が金額に影響を与えるという。

「裁判所が不倫を認定する際、二人に性交渉が可能かどうかも判断材料になります。ヨシオさんと、愛人はともに高齢ですから、この3年で性交渉があったとは考えづらい。慰謝料を請求するのであれば、不貞行為に対してではなく、『同棲の権利を奪われ、夫婦の平穏を侵害された』という点に対しての慰謝料請求になると思います。ただ、仮に請求が認められても、慰謝料は50~100万程度でしょう。ケイコさんが夫と離婚しないということであれば、この額はさらに低くなります」

 特段の事情がない限り、子どもが愛人に対して慰謝料を請求することもできないという。

 老後になって再燃した、とある一家の愛人問題。夫の不倫の代償を家族が負うことになるとは、なんともやりきれない。(AERA dot.編集部/井上啓太)