※写真はイメージです(Gettyimages)
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マイコさんらの家系図
マイコさんらの家系図
解説するのは、アディーレ法律事務所の鮫島唯弁護士
解説するのは、アディーレ法律事務所の鮫島唯弁護士

 親の介護に関するトラブルは後を絶たない。なかには愛人と家を出て行った父が、高齢になってから家族のもとに“返され”そうになり、もめるケースもあるようだ。

 今回は『「もう面倒みれない」と高齢の父を突き返す長年の愛人 介護義務は誰に』で紹介したマイコさんたちのトラブルを例に、介護義務は誰にあるのか、“愛人”への慰謝料請求は認められるのかなどについて、家庭裁判に詳しい、アディーレ法律事務所の鮫島唯弁護士に解説してもらった。

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 前回の記事を振り返りたい。マイコさん(50代)の父・ヨシオさん(80代)は長年、母・ケイコさん(80代)と別居状態にあった。離婚はしていないが、ヨシオさんは複数の愛人の家を転々として暮らしていた。ヨシオさんは女性にだらしない面があったが、マイコさんらが子どもの時には、家族を公園に連れ出すなど、親としての愛情はあったという。

 子どもたちが独立すると、ヨシオさんとケイコさんは完全に別居状態になった。ヨシオさんが家族の前に現れるのは年に数回だけ。そんな関係が数十年ほど続いたのち、愛人とされる女性(70代)から突然、「高齢になり、タカオさんの面倒を見切れなくなった」と連絡があった。マイコさんらは怒りとともに、ヨシオさんをどうするか、困惑している。という話であった。

 まず問題なのが、「ヨシオさんを介護する義務は誰にあるのか」である。これについて、鮫島弁護士は、「親族に義務がある」と断言する。

■親族に発生する「扶養義務」とは

「誰が介護すべきかは、法的に言い換えると『誰が扶養義務者か』ということになります。民法877条は、上から扶養義務の重い順に、義務者を直系血族(本人を中心に、両親・祖父母などとさかのぼっていく親族)と、直系卑属(子や孫などと下っていく親族)、兄弟姉妹と定めています。今回のケースでは、妻・ケイコさん、子のタカオさん・マイコさん・アコさんが該当します。たとえそれまで生活をともにしていても、婚姻関係でない“愛人”には、扶養義務はありません」

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「夫婦は運命共同体」