レギュラーとして出場しそうな捕手で昨年に3割、20本塁打以上の成績を残しているのは選手は森だけ。打って守れる捕手は非常に貴重な存在だ。前述の野村や古田、谷繁はもちろん、現巨人二軍監督の阿部慎之助、現阪神監督の矢野輝弘(燿大)、メジャー初の日本人捕手になった城島健司ら打てる捕手は人気もあった。

 森は昨季、打率.329で首位打者のタイトルを獲得し、本塁打は23本と打撃面では目を見張るほどの活躍を見せた。ただ、森はインサイドワークや盗塁阻止率など守備面にやや難があると言われる。これまで捕手一本だったわけでもなく、プロ入りから数年は外野手や指名打者としての起用がメインだった。

 プロの捕手を育てることは難しい。最初の1、2年は結果には目をつぶって、経験を積ませるしかない。横浜に入団した谷繁氏も、名捕手と呼ばれた野村氏も、入団当初から活躍していたわけではない。

 ある野球評論家はこう話す。名捕手の条件は、まず打てること。それも長打力があること。そして本職の守備では、リード面などのインサイドワークに長けていること。さらに強肩であること。そして監督から信頼されること。これらの条件がそろわないと名捕手にはなれないという。

 現役では、森がもっとも“名捕手”になる可能性が高い。森の打撃力とソフトバンクの甲斐の守備力を併せ持つような捕手が出現したとき、本当の名捕手誕生になるが、その日が来るのはいつになるか。