観戦マナーについては「演技前、演技中は音を立ててはいけない」「後ろ、左右の人の視界を遮ってしまうから前のめりになってはいけない」というのが鉄則とのこと。これは、スポーツ観戦というよりも演劇等の観劇に近い印象を受ける。過去にある選手が登場した際、うっかり前のめりになってしまったこともあったようだが、その時は「いきなり無言で腕をつかまれて引き戻された」とルール違反に“厳しい対応”をされた経験もあるようだ。

 加えて、羽生が好きなプーさんのカチューシャの着用や、お団子ヘアーも周りの人の視界を妨げる可能性があるため禁止されているようで、何かとルールが多いのはフィギュア観戦の特徴かもしれない。

 プーさんに関わるところだと、羽生ファンがプーさんのぬいぐるみなどを演技後にリンクに投げ込むのは有名だが、宇野昌磨、高橋大輔の場合は「いろんな種類のぬいぐるみやお花が投げられている」と、特別決まったものはないそうだが、野菜を苦手とする宇野には白菜のぬいぐるみが投げ込まれたことがあったという。これはファンから宇野に「野菜を食べなさい」という叱咤激励の意味があり、今も野菜のぬいぐるみが投げ込まれるのは、たびたび目にするという。

 このように様々な応援の文化を生み出しているフィギュアファンだが、ファン同士の関係も気になるーー。

 各選手ごとに熱狂的なファンがおり“派閥”があると聞いたことがある方も多いと思うが、実際のところは「ほとんどのファンが尊重しあっている」というのが事実だそう。羽生を応援するファンでも、他の選手のファンと一緒に観戦に行くことも特別なことではないそうだ。

 だが、中には“アンチ羽生”を掲げる集団もいるそうで、加藤さんも「ツイッターでアンチに絡まれた」経験の持ち主。最初の頃は相当なショックを受けたそうだが、このようなアンチは極一部のファンが先鋭化したもので、会場は基本的には平和的な雰囲気が漂っているという。

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フィギュアファンはスポーツ界の“ニュータイプ”?