セーフティーネットとしてレンタル携帯を展開する一般社団法人「リスタート」は2月21日午後7時から、東京・豊島区のとしま区民センターで、就労支援や更生保護に関わる人などを対象にした勉強会を開催する。参加無料※写真はイメージです(Getty Images)
セーフティーネットとしてレンタル携帯を展開する一般社団法人「リスタート」は2月21日午後7時から、東京・豊島区のとしま区民センターで、就労支援や更生保護に関わる人などを対象にした勉強会を開催する。参加無料
※写真はイメージです(Getty Images)

 職場で急なめまいを感じ、嘔吐した。建設業で働くタカシさん(仮名、39歳)は、仕事を休んで病院へ行くと、そのまましばらく検査入院することになった。日常的にふらつきと吐き気があり、あらゆる検査をしても理由がわからない。結局、入院は1ヶ月に及んだ。

 就職氷河期世代で、高校卒業後に警備会社や飲食店で非正規の職に就いた。30歳で父を亡くし、3年後に母も他界。自暴自棄になり、それまでの貯金をすべて使い果たしていた。両親が遺した家で暮らしながら日払いの仕事をしていたため、休職とともに収入も途絶えた。独身で頼れる親戚もいなかった。

 神経系の難病だとわかったころには、携帯電話が止まっていた。慌てて院内の売店でテレホンカードを買い、公衆電話から携帯会社へ電話すると、割賦払いにしていた機種代を含め5万円を超える負債を抱えていることがわかった。支払いたい気持ちはあったが、強制解約に。携帯電話のない生活が始まった。

「通院しながら自宅療養しているときも、日常的に吐き気やめまいがありました。1人暮らしで自分がいつ倒れるかわからない状況で、緊急の電話ができないのはものすごい恐怖です。すぐに病院に行ったほうがいい状態なのか、様子をみていていいのか、医師に相談することもできませんでした」

 携帯電話がない――。ただそれだけのことで、危機に陥る人たちがいる。連絡が取れない、インターネット上にある情報にアクセスできないなどの直接的な問題だけでなく、社会的な信用を失い、就職や部屋探しができないなど、生活再建に向けての大きなハードルになることもある。さらに業界では、大手キャリアや格安スマホを展開する企業など約40社が不払い者情報を交換しているため、1社で未納があると他社でも契約ができない状況となり、なかなか“携帯ブラック”から抜け出せないのだ。

 携帯各社が不払い者情報を交換するようになったのは1999年。複数の携帯会社で料金未納を続ける「渡り」や「使い捨て」が横行し、それに対抗する目的で始まった。電気通信事業者協会(TCA)によると、不払い者の氏名や生年月日、住所などの情報は完済された場合を除き、契約解除から5年間は残り、新規契約などの審査の際に活用されているという。件数などの詳細は非公表。信用情報機関のシー・アイ・シー(CIC)が2013年にまとめた統計によると、携帯端末代の支払いが滞ったことでブラックリストに載った件数は同年12月で274万9千件、契約数の3%にのぼっていた。ITジャーナリストの三上洋さんは「3%というのはかなり大きな数字ですが、現在も横ばいまたは微減している程度だと考えられる」と指摘する。

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身に覚えのない携帯で20万円滞納