「未払いには、真面目に払うつもりで滞ってしまうケースと、最初から転売目的の犯罪グループによるものの2パターンあります。10万円を超える価格帯がメインになるなど端末代が高額になっている今、割賦販売での審査が厳しくなり、支払いが難しくなりそうな人が買えなくなるという現象が起きていると想定できる。携帯電話の販売台数は右肩下がりですが、NTTドコモの決算では端末の債権の金額が全体としては大きくなっていると報告されているので、犯罪によるものが同程度かやや増えているということでしょう」(三上さん)

■身に覚えのない携帯で20万円滞納

 料金を払っていても、意図せずに“携帯ブラック”になってしまう人もいる。フリーランスで働きながらシングルマザーとして子育てをしていた30代のアキコさんもその一人。節約のために別のキャリアに乗り換えようとしたところ、審査が通らず、ブラックリストに載っていたことが発覚した。インターネットや電話は近くの公衆電話や無料Wi-Fiを使う生活になり、仕事の得意先は半分以上が離れてしまった。

 支払いの滞納などしたこともなく、身に覚えがなかったアキコさんは、弁護士に相談して情報開示を依頼。その結果、契約していないはずの携帯会社に20万円滞納していたことがわかった。使っていたのは、かつての女友達だった。10年以上前、クレジットカードの支払いが滞り、携帯電話が契約できなくなったと泣きつかれ、名義を貸していたという。

 セーフティーネットとしてレンタル携帯を展開する一般社団法人「リスタート」の高橋翼さんは、スマートフォンなどの端末が高額になり、割賦払いが定着したことなどから、「若い人の間でも、携帯ブラックと呼ばれる“通信弱者”が増えている」と指摘する。

「ゲーム課金や職場がブラック企業で体を壊すなど、携帯料金が未納になる事情は人それぞれですが、働いて返済したいと思っても、連絡先がなければ就職どころか、日雇いのアルバイトにさえ就けないのが現実です。多くの場合、銀行口座の開設、住居の契約もできません」

次のページ
口座開けず、家族に電報…