それでは、過去に最も多くチョコレートを貰った選手は誰か?比較的記憶に新しいのが99年、西武ルーキー時代の松坂大輔だ。キャンプ地の高知に届いたその数は、なんと1000個。所沢の球団事務所に届いた分と合わせて約1200個になった。

 山積みになった段ボール箱を前にして、さすがの“平成の怪物”も「チョコは溶けてしまいますし、一人じゃとても食べきれない」と困惑の表情。球団と相談し、「全国のファンから頂いて大変ありがたいんですが、無駄にもできませんし」と高知市内4カ所の児童養護施設に約500個をプレゼントした。

 西武は森祇晶監督時代にも渡辺久信、清原和博、工藤公康の人気トリオがチョコの数を競い合い、87年にチームトップの1214個を貰った渡辺は「最高で2000個貰った」と回想している。

 89年にはロッテのルーキー・前田幸長が1500個貰い、毎年1000個以上をキープも、結婚直後の92年に114個と10分の1に激減。トップの座も180個の愛甲猛に奪われた。「愛甲さんも結婚してるわけでしょ。だから、結婚が原因ってわけじゃないと思うんですよ」と首を捻った前田だが、日本ハムのトレンディーエース・西崎幸広も、結婚して子どもが生まれたあともトラック数台分のチョコが届き、娘の莉麻(現タレント)が「父に届いたチョコを食べていた」と明かしている。結婚したから必ずしも数が減るとは限らないところも面白い。

 ちなみに西崎の独身時代の88年には、ファンからチョコを貰って喜んだある選手が、裏側に「西崎さんに渡してください」と書いてあったことから、ガッカリしたという悲話も伝わっている。また、80年代初めの広島では、1番人気の高橋慶彦に対抗して、自分でお金を払って女の子にチョコを買いに行かせた選手もいたという。

「せっかくの機会を見過ごす手はない」と商戦に便乗したのが、菓子メーカーが親会社のロッテ。84年から「バレンタインキャンペーン・愛の直送便」と銘打ち、自社製品のチョコをお目当ての選手に贈る企画をスタートさせたところ、87年、落合博満との大型トレードで移籍してきた牛島和彦に1123個が届き、前年まで3年連続トップだった山本功児を余裕で抜いてトップに。「中日時代は最高で200個だった」という牛島は「1日3個食べても1年かかる。みんな食べたいけど、そりゃ無理ですわ」とうれしい悲鳴を上げた。

 17年からは「あなたがチョコを渡したい選手」投票を実施しており、昨年まで成田翔が3年連続1位に輝いている。

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おじさんからのチョコに福留孝介は“困惑”