改めて中日の現状を見てみると、スラッガータイプの若手はルーキーの石川昂弥くらいしか見当たらず、ホームランの打ち合いで勝てるような布陣にはなっていない。また投手陣も昨年は広いナゴヤドームを本拠地としていながら、被本塁打数はリーグ4位の146本を記録している。このままホームランテラスだけを導入しても、チームの状況が大きく改善するとは考えづらいだろう。

 ナゴヤドームが開場した1997年の中日は強力打線が機能せずに最下位に沈んだが、当時監督だった星野仙一は大胆なトレードを実行して投手力と機動力を前面に出す野球へと舵を切り、2年後の1999年にリーグ優勝を果たしている。また2000年代中盤に落合博満監督で黄金時代を築いた時も、強力な投手陣と手堅い守備を前面に出した戦い方だった。そのような歴史を考えても、安易にホームランテラスを作る前に、どのような戦い方をしていくかというビジョンを明確に示し、それに沿ったチームつくりをしていくことが重要ではないだろうか。強い中日復活に必要なのはホームランテラスだけではないはずだ。(文・西尾典文)

●西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

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西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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