他にも、選手権決勝に途中出場した明大2年のCTB児玉樹は身長192センチ、体重101キロ。大型バックスの雲山や中野を超える、「超大型」バックスだ。ラグビーワールドカップ2019に出場した日本代表選手31人の中に入っても4番目の長身で、姫野やリーチマイケル(東芝ブレイブルーパス)、ピーター・ラブスカフニ(クボタスピアーズ)らを上回る。海外の強豪チームには、ウェールズのWTBジョージ・ノース(193センチ)やオールブラックスのCTBソニービル・ウィリアムズ(191センチ)ら身長190センチ超のバックス選手もいるが、日本ラグビー界では希有な存在だ。

 花園ラグビー場で行われた全国高校大会にも、メディアに「怪物」と書かれた選手がいた。連覇を目指した大阪桐蔭のキャプテン、奥井章仁。身長178センチ、体重102キロと上背こそそれほど大きくはないが、突破力は抜群。2年時から高校日本代表に選ばれ、昨年は早生まれの大学3年生までが選考対象のU20日本代表に「飛び級」で選出された。卒業後は、姫野を育てた帝京大学に進学する。

 今シーズンの花園で悲願の単独優勝を果たした桐蔭学園の2年生ロック、青木恵斗は、決勝で見事なオフロードパスでトライをアシストした。ゴール前でタックルを受けながら、外側の右腕を返すフリップパスで右サイドの味方につないだ。身長187センチ、体重107キロの青木は、その前に相手防御をぶち破って自らトライも奪っている。フィジカルの強さにスキルも併せ持った選手の登場は、日本ラグビー界の新時代到来を感じさせた。

 現在行われているトップリーグは5月まで続き、6月にはフランスで開かれるワールドカップ2023に向けた日本代表の新たな挑戦が始まる。日本代表にとって昨年のワールドカップ後最初のテストマッチとなるのは、6月27日のウェールズ代表戦(静岡・エコパスタジアム)だ。

 日本が過去14回戦っているウェールズ代表が初めて来日したのは1975年。日本代表が6-82と敗れた最終第2テストで旧国立競技場を埋めた日本のファンを最も沸かせたのは、身長170センチのフランカー石塚武生(故人)が相手の名WTBをゴール前で倒した瞬間だった。大敗の中で小柄な日本人選手が見舞った一つのタックルに観客が溜飲を下げた試合から約半世紀。今度はフィジカル面で真っ向勝負できる姫野らがどんなプレーで観客を沸かしてくれるだろうか。