■溺愛系Twitterポエム/格言を紡ぐ「0号室」

「0号室」は7歳上の妻とののろけをTwitterやInstagramで書いていたところ書籍化のオファーがかかり、2016年に妻との馴れ初めを物語形式で書いた『勇気は一瞬 後悔は一生』(ワニブックス)でデビューした書き手だ。

 ここ数年、TwitterやInstagramでの主に恋愛に関するポエム的なつぶやきを書籍化したり、人気投稿者に小説を書かせたりする流れがある。

 0号室もそういう流れからエッセイ『がんばる理由が、君ならいい』(ワニブックス)や私小説『愛、という文字の書き順は教わっても愛し方までは教わってこなかった』(KKベストセラーズ)を書くに至った。

 0号室はこのジャンルの先駆である蒼井ブルー同様、女性のことを褒めまくり、気持ちよくさせるつぶやきを投稿して女性の支持を得ている。エッセイ集でも小説でも、恋愛や家族に関する持論を展開するのが特徴だ。

 彼の発するメッセージは、

「大事な話は、目を見て伝えること/文字だけじゃ心は伝わらない」
「とにかく今があるのは支えてくれる誰かのおかげなんです」
「いくら願っても届かないなら、いっそ想いとともに消えてしまいたくなる」

 といったもので、自己啓発書の大家・中谷彰宏や、叙情的な写真+詩で一時代を築いた銀色夏生を思わせる。

 おそらく0号室の読者である女子中高生たちは中谷も銀色夏生も知らないのだろうが、時代は変われどこうした表現に需要はある、ということなのだろう。

■慌ただしく不安を煽られる時代だからこその“溺愛系”人気

 ひとくちに“溺愛系”といってもいろいろなコンテンツ/アカウントがあることを見てきたが、共通するのは、出会ってから付き合うまでのドキドキではなく、付き合ったり結婚しても続くラブラブで幸せな状態を見たいということ。

 ドーパミンやアドレナリンが出るような興奮する出来事ではなく、オキシトシンが分泌されるようなほっこりした触れ合いがほしいということだ。

 なぜこんなにも“溺愛系”は求められるのだろうか?

 理由はさまざまだろうが、ひとつ言えるのは、現代はかつてであれば考えられないくらい無数の情報が溢れている。ただでさえ敏感で不安になりがちな若い女性たちは、日々SNS上に流れてくる情報や感情によって疲れている。だから安心感を味わえ、不安を忘れさせてくれる“溺愛系”に惹かれるのだろう。(文/飯田一史)