錦織市長は、2014年の市長選で初当選した。実は、その時に公約として掲げたのが「資料館の建設」だった。もともとは、鹿島神宮が所有する空き地に建設をするつもりだった。ところが、神社の所有地では国からの補助金の対象にならないことなどが発覚。それを受けて、市民の土地を買収する計画に変更された。この頃から、ハコモノ建設に反対する声が高まってきた。

 もちろん、巨額の費用を投資して建設しても、それに見合った利益があるのなら「ハコモノ=悪」なわけではない。錦織市長も堂々と計画の意義を説明すればいいはずだ。それが、ある“行動”によって市民の激しい怒りを買うことになった。

「錦織市長は、18年4月の市長選でハコモノ反対派が対立候補を立てたことを受けて、突然、歴史資料館の建設計画を『白紙』にすると表明したんです。なのに、当選から約2カ月で計画を推進する考えを示しました。選挙で負けないように『だまし討ち』をして、当選しました」(前出の女性)

 巨大公共事業の計画を「白紙」にすることで選挙を勝ち抜き、後に撤回することは、カジノ誘致をめぐって林文子横浜市長が同様の手法を使ったことで問題となっている。錦織市長も、再選後に「選挙戦術と言われれば、そうかもしれない」とメディアの取材に語っており、“確信犯”だったことを隠そうともしない。

 これだけではない。計画を一度白紙に戻した時には、周到な準備をしていた。

 話は市長選前の18年2月15日にさかのぼる。この日、ハコモノ反対を掲げた佐藤信成氏(現・鹿嶋市議)が市長選への立候補を表明。同じ日に、地元関係者や有識者を集めた「鹿嶋市中心市街地活性化検討委員会審議部会」の3回目の会議が開かれた。そこには、錦織市長の「懐刀」と言われている市村修副市長も出席していた。その議事録には、こう書かれている。

<市村委員)ご存知のように間もなく市長選だが、そこで歴史資料館が不要なハコモノとして争点になりそうな流れがある。(中略)予定通り建設を進めれば反発を買いかねないし、選挙の争点になってしまうと今度は選挙の結果に左右されることになる>

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議論を誘導? 副市長の発言