鹿島神宮(撮影/西岡千史)
鹿島神宮(撮影/西岡千史)

 紀元前660(神武天皇元)年に創建され、2600年以上の歴史を持つと伝えられる鹿島神宮(茨城県鹿嶋市)。近代まで「神宮」と呼ばれていたのは鹿島神宮のほかは伊勢神宮と香取神宮のみで、日本全国に約600社ある鹿島神社の総本社でもある。正月には初詣の参拝者が約70万人訪れる、関東最古の神社だ。

 その格式高い神社が保有している国宝を巡って、いま、鹿嶋市長と市民の対立が激化している。鹿島神宮は、国宝である長さ2.7メートルある日本最古の直刀をはじめ、多くの宝物を保有している。これまでは鹿島神宮の敷地内の宝物館に所蔵されていたが、2018年5月に境内の整備計画によって休館。そこで現在、市は境内の外にある商店街に鹿嶋市の歴史を学べる歴史資料館の建設を計画している。歴史資料館が建設されれば、鹿島神宮も隣接した土地に宝物館を移転させる計画だ。

 これに市民が“待った”をかけた。市内在住の30代女性は言う。

「市は、神宮の近くにある商店街の活性化を理由にしていますが、歴史資料館と周辺の整備費用で約30億円かかります。高齢者の福祉や子供の教育など税金が必要なところはたくさんあるのに、市長はハコモノを作りたいだけではないでしょうか」

 資料館の建設を推進しているのは、錦織孝一・鹿嶋市長だ。年間約200万人が訪れる鹿島神宮の参拝客をテコに、周辺の商店街を活性化させる計画だ。だが、現時点で示されている計画では、商店街の活性化に結びつくのか疑問の声が多い。

「建設予定地は現在の商店街から100メートルほど南側に外れていて、歴史資料館ができても商店街が活性化されるとは思えません。それよりも、人の流れが変わってしまって商売がやりにくくなるのではないでしょうか」(前出の女性)

 歴史資料館の建設予定地には、現在も約10世帯が暮らしている。市はその用地を買収して、建設する予定だ。だが、買収予定地に住む住民の一人は「引っ越しをするにもどこに行くのかわからないし、住み慣れた場所から離れたくない」と困惑している。

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ハコモノ建設反対の声に市長がとった行動とは