このような答案を採点官が読むと、内容が実に平凡で物足りなく感じるかもしれませんが、減点材料がなければ合格点をつけざるを得ないのです。


 
 このように、採点官がしぶしぶ合格点をつけるような答案を書ける人は必ず合格します。他の人が思いつかないような奇抜なことを書いて他の受験生に差をつけたいと考える人がたまにいますが、それはあまりに危険すぎます。他の人が思いつかないようなことを書こうとすると、論述内容が非常識で荒唐無稽なものになってしまうことが非常に多いからです。
 
 では、他の受験生に差をつけるならどうすればいいのでしょうか。それは正確な文章力を身につけることです。ミスの少ない文章を書くことこそが最大の武器になります。小論文の勉強をする際には、減点されない正確な文章力を身につけることを常に意識してください。

■正確な文章力を身につけるための四つのポイント

(1)一文をコンパクトに
下手な文章には一文が長いという共通点がある

(2)読点を正確に使う
読点の一つひとつには意味があります。読点を使うことで文を読みやすくするほか、読み手に文の正確な意味を伝わりやすくします。

(3)逆説の接続詞には細心の注意を
 接続詞を上手に使うことで文章の流れがよくなりますが、その使い方を誤ると流れが悪くなり、書き手の真意が伝わりにくくなります。特に要注意なのが「だが」「しかし」などの逆接の接続詞です。

(4)言葉の呼応を忘れない
言葉の呼応とは、たとえば「なぜなら」には「~からである」を、「たとえ」には「~ても」を対応させる表現技法のことです。「なぜなら」には「~からである」を、「きっと」には「~だろう」や「~にちがいない」を。そして「…たり」には「~たり」を呼応させるべきです。

 小論文を書く際に、せっかくの努力を点に結びつけるために必ずやってほしいことがあります。それは、「書いている途中で何度か手を止めて読み返す」ということです。できれば段落を書き終えるたびに手を止め、読み返してください。ミスはその時に見つけるべきであり、答案を書き終えた後では後の祭りだということを肝に銘じてください。(文/石川美香子)

〇芝 高太郎/医系予備校 進学塾ビッグバン小論文・面接科主任。京都大学卒。面接についての研究を日々重ね、これまで多くの受験生を合格に導いてきた。年間で2000通の答案を添削し、面接練習は200時間に及ぶ。

※週刊朝日MOOK『医学部に入る2020』から抜粋