姉・真凜と同じく米国に拠点を移した本田紗来(C)朝日新聞社
姉・真凜と同じく米国に拠点を移した本田紗来(C)朝日新聞社

 リンクに黄色い衣装を着た本田紗来が登場すると、そこだけスポットライトが当たっているように目を惹く。ジュニア世代の選手に混じると一際小柄な本田には、12歳ならではの愛らしさに加え、スケーターにとって強力な武器である“華"があることを感じた瞬間だった。

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 11月15~17日、KOSE 新横浜スケートセンターで行われた全日本ジュニア選手権。本田は、16日に行われた女子シングル・ショートプログラムに22番滑走で登場した。全日本ジュニアには、ジュニア(6月末時点の年齢が13~18歳)より年下のカテゴリー・ノービスでの国内最高峰の大会、全日本ノービス選手権・ノービスA(6月末時点の年齢が11~12歳)で好成績だったスケーターの推薦出場枠があり、4位だった本田もその一人として出場している。

 本田は一昨季、全日本ノービス・ノービスB(6月末時点の年齢が9~10歳)で優勝、脚光を浴びた。昨季も全日本ノービス・ノービスAで2位、初出場の全日本ジュニアで総合17位、さらに国際大会2戦目となるチャレンジカップ(アドバンスド・ノービス女子)でも優勝と、好成績を残している。

 しかし、2度目の全日本ジュニアはほろ苦いものとなってしまった。本田は、最初に跳んだ3回転ルッツ―2回転トウループではエッジエラー、続く3回転ループでは回転不足の判定を受ける。最後のジャンプ、ダブルアクセルも両足着氷気味となり重度の回転不足をとられ、ショート28位でフリーに進むことができなかった。ノービスAではショートを滑ることがないハンディを差し引いても、ジャンプが本来の出来ではないことは明らかだった。滑り始めると光を放つような魅力がある本田を、フリーで見ることができないのは残念だった。

 不調の原因は、おそらく環境の変化にある。昨季まで濱田美栄コーチの下で練習していた本田は、今夏から姉・真凜も師事するラファエル・アルトニアンコーチの教えを仰ぐ決断をした。現世界王者ネイサン・チェンも指導する名伯楽から学ぶことは多いだろうが、拠点をアメリカに移すという決断は、まだ小学生である本田にとり簡単なものではなかったはずだ。4位に終わった全日本ノービスの際、日本で通学しアメリカでスケートをする環境下で、ジャンプの練習が不足する時期があったという主旨の発言をしている。日本では本田武史コーチの指導を受けているとはいえ、環境が変わって初めて迎えるシーズンの難しさは容易に想像がつく。

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夢の五輪出場を目指し“厳しい道”を選択