大谷翔平は来季、変わったエピソードと十分な実績を誇る指揮官の下でプレーすることになる(写真/Getty Images)
大谷翔平は来季、変わったエピソードと十分な実績を誇る指揮官の下でプレーすることになる(写真/Getty Images)

 来シーズンから、エンゼルスの指揮はジョー・マドン監督が執る。カブスの監督だったマドンは、5年契約の満了とともに退任すると、1カ月経たないうちにエンゼルスの監督に就任した。

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 エンゼルスは、マドンの古巣だ。1975年にドラフト外で入団し、捕手としてマイナーリーグで4年プレーした後もエンゼルスに残り、スカウト、打撃インストラクター、マイナーリーグの監督、メジャーリーグのコーチを歴任してきた。その在籍期間は、30年以上に及ぶ。エンゼルスが1度だけワールドシリーズで優勝した2002年は、ベンチコーチを務めていた。

 ただ、エンゼルスがマドンを監督に招いたのは、かつて在籍していたことが最大の理由ではない。エンゼルスを去ってデビルレイズ(現レイズ)の監督となって以来、マドンは数々の成功を収めてきた。

 これまでにレイズがポストシーズンに進出した5度のうち、今年を除く4度はマドンが采配を振っていた。カブスを指揮した5年間で、ポストシーズンへ進めなかったのは今年だけだ。2008年は創設から10年続けて負け越していたレイズを地区優勝に導き、リーグ優勝も飾った。2016年にはカブスに108年ぶりのワールドシリーズ優勝をもたらし、1945年にかけられた「ヤギの呪い(熱心なカブスファンがペットのヤギの入場を球団に拒絶されて以来、カブスがワールドシリーズで勝てなかったジンクス)」を解いた。

 3度の最優秀監督賞は、21世紀以降ではボブ・メルビン監督(現アスレチックス)と並び、最も多い。今回と同じく、レイズからカブスへ移った時も、ブランクのシーズンはなかった。ちなみに、今年のワールドシリーズで優勝したナショナルズのデーブ・マルティネス監督は、レイズでもカブスでも、マドン監督の下でベンチコーチとして働いていた。

 これまで、マドンは柔軟な発想で時代を先取りしてきた。エンゼルスのコーチ時代には、極端な守備シフトを監督に提言し、その先駆者となった。しかも、すでにマドン自身は守備シフトを多用していない。ベン・ゾブリストをレギュラーながら内外野を守るスーパー・ユーティリティに仕立てたのも、マドンだ。同じ試合で、複数の投手にマウンドと外野を行き来させたこともあった。

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