晩餐会会場のストックホルム市庁舎にあるレストラン、スタッズヒュース・シェラレン。直訳すると「市庁舎の地下」という名のこのレストランで、事前に選んだ年の晩餐会メニューを楽しむことができるのだ。

 筆者が食べたのは1968年に川端康成氏が文学賞を受賞した年の晩餐会メニュー。コース内容は下記の通りだ。(メニューは筆者訳)

 前菜:ロブスター アボカド・グルメソース
 主菜:子羊のあばら肉とキノコのクリームシチュー マディラ・ソース ウォルドルフ・サラダ付
 デザート:パイナップル・パフェ

 食器やカトラリー類は、晩餐会と同じもので、料理の盛り付けはシンプル、かつ量も少なく感じた。1000人以上の料理を同時に提供しなければならないためなのか、簡素化されている印象を持った。

 料理は、ベーシックな王道をいく調理方法に、その時代のポイントとなる食材を要所ごとに散りばめているように思われた。たとえば、アボカドやパイナップルはいまでは当たり前の食材であるが、68年当時には斬新だったのではないだろうか。

 料理の説明をちょっとしておくと、メイン料理のマディラ・ソースは、ポルトガルのマディラ島で生産される甘めのワインを煮詰めて作られた、独特の芳香を感じさせるソースだ。

 ウォルドルフ・サラダは、ニューヨークにある歴代大統領や昭和天皇も宿泊した超高級ホテル、ウォルドルフ・アストリアの名物サラダで、マヨネーズとレモン汁をベースに、リンゴとクルミ、セロリなどが入っている。

 デザートは実際のノーベル晩餐会と同様に部屋が暗くなり、ダイナマイトを模した花火付きのパフェをサービス・スタッフが運んで来てくれた。

 スウェーデンのストックホルムに行く機会があれば、ぜひとも晩餐会メニューを食して、受賞者の気分とノーベル賞の歴史をじっくりと味わってみてはいかがだろうか。

新山勝利(にいやま・しょうり)
研修セミナー講師、マーケティング・コンサルタント、大学講師。日本商業学会、日本マーケティング学会、日本プロモーショナル・マーケティング学会・正会員。多数の専門誌に執筆。世界30カ国、150都市を歴訪。中でもフランス・パリには30回訪問。飲食店の経営経験もある。著書に『売れる商品陳列マニュアル』(日本能率協会マネジメントセンター)など。ホームページは http://www.ureru.jp/