4話では、尾花の元恋人が現れる。フランスのレストランサイトの編集長。高評価を与えたレストランは予約殺到、低評価なら即クローズ。そんなグルメ評論家でもある。彼女がグランメゾン東京のプレオープンの日に来店する。「どうすんのよ。プレオープンの日がいきなり運命の日になってしまったじゃない」と抗議してから、早見はこう言う。

「やるしかないわよ、あんたのせいで」

 この「あんた」、鈴木さんが発するから、はすっぱな感じにならない。女優・鈴木京香が木村拓哉という存在にひるんでないどころか、むしろこちらがベテランなのだという自負さえも感じられる。小気味よし。

「何をやってもキムタクと言われる」。そう木村さん自身が嘆いている、と書かれた記事を読んだことがある。スターゆえの悩みだ。今年公開された彼の主演映画「マスカレードホテル」を観たが、確かに「木村拓哉をカッコよく見せる」ことが主題のようだった。東野圭吾原作なのだが、「謎解きよりも木村拓哉」だった。

 そうなった理由の一つに、相手役が長澤まさみさんだったというのがあると思う。彼女の力量を言っているのではない。長澤さんが木村さんと「同じくらいの年齢、立場」という役だったのだ。最初は反発し合うが、お互いの仕事ぶりにいつしか認め合い……。そんなストーリーだった。

 長澤さん、1987年生まれ。木村さん、1972年生まれ。15歳の差。だから頭の中で、「この2人は、おんなじくらいの年なのね」と翻訳しなくてはならない。そんな感じ。「そしてだんだん、引かれあっていくわけね」と。これは正直、無理がある。

 その点、1968年生まれの鈴木さんは、木村さんより4歳年上だ。早見がオーナーシェフで、尾花はその下で働いている。だけど料理の腕は尾花が上。そんな微妙な関係性と実年齢がぴったり合っている。

 このドラマ、早見が「おばさん」、尾花が「おじさん」と呼ばれるシーンが、そこそこの頻度で登場する。美人女優が美人の役を演じ、「おばさん」と言われるのをあまり見たことがない。鈴木さんがそれを引き受けたから、木村さんも了承したのではないか。と、これは勝手な想像だ。

 そう思ったのには、少しだけ訳がある。だいぶ昔のことなので、書かせていただくことにする。

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納得したら淡々と仕事をする人