夫は、帰ってくると、義母に言われたことを伝えます。以前の徹子さんなら論理的に反論したところですが、

「あなたは、私たちの家庭をどうしたいの? 私は、たとえ留年することになったとしても、野々花に寄り添いたいわ」

と自分たちの問題として話し続けたそうです。夫も板挟みで、相当に追い詰められたようですが、あるときカウンセリングで自ら書いた家族の図を思い出し、自分の家族は妻と子だ、と思ったそうです。

 以前も、このコラムでご紹介しましたが、紙に家族をプロットしてもらい、自分が家族だと思う範囲を円で囲んでいただく図です。夫は、自分・徹子さん・子ども2人のサークルと、両親・自分の2つのサークルを書いていました。

 それからも義母の攻勢は続いたようですが、夫は、洗脳されることがわかっているのに実家に呼ばれて行くことはなくなったそうです。それと並行して、野々花さんは徐々に学校に行くようになったそうです。これらの間に、どういう「因果関係」があるのかは証明できませんが、システム全体の流れが変わった、と理解できるものです。

 もし人間関係で何か問題を抱えているのなら、誰が悪いかよりも、出せるはずのパワーを「出し惜しみ」しているのは誰かな?という視点で見てみるのは一つの手がかりです。(文/西澤寿樹)

※事例は、事実をもとに再構成してあります

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西澤寿樹

西澤寿樹

西澤寿樹(にしざわ・としき)/1964年、長野県生まれ。臨床心理士、カウンセラー。女性と夫婦のためのカウンセリングルーム「@はあと・くりにっく」(東京・渋谷)で多くのカップルから相談を受ける。経営者、医療関係者、アーティスト等のクライアントを多く抱える。 慶應義塾大学経営管理研究科修士課程修了、青山学院大学大学院文学研究科心理学専攻博士後期課程単位取得退学。戦略コンサルティング会社、証券会社勤務を経て現職

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