暴力、暴徒といった政府発表や報道について、山本さんはこんな感想を示した。

「暴力的、は確かにそうかもしれない。だけどテレビを見ていると、数万人集まった『平和』なデモの、暴力的な騒動を起こしているあえて数人だけにカメラを向ける。 実際、歌い、声を上げている国民に対して暴力的な騒動を起こしているのは、国民のお金で作ったり買ったりした催涙ガスや水ボンベを、国民に対して投げまくる警察や軍ではないのか?

 暴力的なデモやマニフェストに対し、私は反対だ、基本的には。だけど、今回の騒動を見ると、たしかにマニフェストが悪化して、強盗をしている人もいるけど、それだけ、格差があること、それだけ、人々が限界なことを表しているのではないのか」(10月20日)

 山本さんは暴力に理解を示すわけではない。だが、暴動にまでに至ったチリの状況について、彼女なりに考えている。そして、集会に足を運んだ。そのときの気持ちをこう綴っている。

「地下鉄の運賃値上げだけが問題ではない。水道や電気の民営化、保険や年金制度の不備、教育格差、貧困層の拡大など、公共政策の未整備、社会福祉政策の欠落が作り出したさまざまな問題に対して、市民は抗議しているのではないか。

 チリも、香港だと思うぐらいの景色になっています。チリの運動は、やはり学生が活発です。ある意味、羨ましいぐらい学生が声をあげています。それぐらい、1990年に終わったピノチェトの独裁政権により、国民が敏感なんだな、と思います。私も、明日は安全第一を守りながら、学生主体のマニフェストではなくても参加しようと思います。これは、国境を超えた問題だから。こうして、どんどん格差を許してしまい、世代を超えた格差社会を止めるには、私たち若者、そしてある意味恵まれた環境で育った私たちこそ、一緒に戦わなければいけないと思ったから」(10月20日)

 山本さんに連絡をとってみた。彼女は日本に向けて、こう語りかけた。

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