荻上:そのときは取材してはいけない所を取材したことを問い詰めるために圧力をかけているのか、それとも別の何かを疑っているのか。情報源をとっ捕まえるために口を割らせたいのか。どうなんでしょうか?

峯村:おそらく最後のが一番可能性が高いと思います。情報源を捕まえたいというのが一番の目的だろうという感じはすごくしました。彼らももちろん分かっているとは思うんです。「あなたが違法なことをギリギリしてないっていうのは分かっている。でもその情報はどうやって知ったんだ?」。そこですね。

荻上:それは通常の民主主義国家であれば、違法な取り調べ、つまり権利のない行為ということに本来なるわけですよね。ご著書の中では、「アメリカのスパイではないか」という疑いをかけられたというシーンもあります。これはブラフでそう言ってきているのか、それともその可能性を本当に疑っているのか。

峯村:おそらく両方だと思います。ブラフをかけてきて、私が動揺したりとか、そういうのも見てるのかなという感じはしました。

荻上:でもレストランを出たときに拘束されたということは、峯村さんの行動がずっと把握されてたということですよね。

峯村:その可能性はあると思います。

荻上:尾行、盗聴、あるいはGPSでの位置把握でしょうか?

峯村:そうですね。ただ、あのとき私は自分の携帯は違う場所に置いてきたんです。重要な現場に行くときはほぼ持ち歩かないですね。

荻上:そこで押収されてしまったりするからですか。

峯村:それもありますし、あとやはり微弱電波が出ていて位置が把握されてしまうので、違う場所に置いて、わざわざ携帯のない状況にして現場に行っていました。

荻上チキ(おぎうえ・ちき)
評論家。1981年、兵庫県出身。TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」(平日22時~)のパーソナリティーを務める。メディア論を中心に、政治経済、社会問題、文化現象まで幅広く論じる。「シノドス」など複数のウェブメディアの運営に携わる。著書『ウェブ炎上』『ネットいじめ』『僕らはいつまで「ダメ出し社会」を続けるのか』『彼女たちの売春』など。

峯村健司(みねむら・けんじ)
朝日新聞国際報道部記者。1997年入社。中国総局員(北京勤務)、ハーバード大学フェアバンクセンター中国研究所客員研究員などを経て、アメリカ総局員(ワシントン勤務)。ボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『十三億分の一の男』『宿命 習近平闘争秘史』など。